とにかく答えを出す:『武器としての決断思考』


 なぜぼくたちは決断することが苦手なのか?
「そりゃ、悩んでいるからだよ!」というのもひとつの答えですが、その本質はメリットとデメリットのあいだで揺れているからじゃないかと。


武器としての決断思考 (星海社新書)

武器としての決断思考 (星海社新書)


 たとえば、「犬を飼うか、飼わないか」という悩み。
 犬を飼えば孤独じゃなくなるし、頑張って働くモチベーションが得られるかもしれない。でも一度飼ってしまうと、なかなか手放すことができないし、家を空けにくくなるかも。だからぼくたちは悩む。


 本書が提案するのは、ディベート方式思考法。つまり決断するための思考法のことです。
 ディベートというと「朝まで生テレビ!」みたいな討論番組を思い出しますが、1つのテーマについて賛成側と反対側に分かれて意見を戦わせて「結論を出す」ことがディベート方式の特徴です。上の例で言えば、「犬を飼う」または「飼わない」ですね。


 次に考えるべきは「問題の2者択一化」です。「Who am I?」なんて哲学的なテーマを設定しちゃうのはNG。賛成側や反対側に分かれられないし、いろんな方向に考えられてしまうので、いつまでも結論が出せません。多少強引にでも問題を「○○すべきか、否か」という2択に落とし込みます。


 では、さっそくやってみましょう。
 ネット社会では1つのキャラ(固定ID)で活動するほうが有利だと僕は考えています。が、炎上したり個人情報を特定されたりするのが怖くてなかなか実行に移しづらいです。というわけで「1キャラで活動すべきか、否か」、これをテーマにして考えてみます。
 ちなみに、一人全役です(笑)
 そして賛成側にまわるときは、「メリットの3条件」に沿ってメリットを挙げていきます。
 3条件は以下になります。


<メリット3条件(賛成側)>


1、内因性:どんな問題ある?
2、重要性:その問題はどれくらい深刻なの? 
3、解決性:その行動によって、問題は解決する


 ちょっと分かりづらいですね。
 あれこれ考えるより、とにかくやってみます。


1、1キャラで活動しないと、他者からの評価が分散してしまい、かつ、リアルの私とも合致しないため損。
2、緊急性は低いけど、効率性が悪いという意味でそこそこ重要。
3、ハンドルネームやプロフィール写真を固定すればOK。


 以上が3つの条件を満たした、賛成側のロジックです。
 では、反対側もやってみましょう。
 こちらも「デメリットの3条件」があります。


<デメリットの3条件(反対側)>


1、発生過程:上の行動を取ったとき、新たな問題が発生するんじゃないの?
2、深刻性:その問題はどれくらい深刻なの?
3、固有性:現状はそんな問題は起きてないよ。
 

 これもとにかくやってみます。


1、名前や写真を固定にすると、炎上したときに困る。ずっと晒され続け、リアルまで特定される可能性がある。ネット上で一度マイナス評価を受けると挽回しづらい。結果的に、ネットでの活動がしづらくなる。
2、ネットのみならずリアルにも波及する恐れがあり、すごく大きいから怖い。
3、いまのところ安心だけどね。


 以上が反対側の主張です。
 ぼくたちは、以上のメリットとデメリットのあいだで迷っているわけですね。


 さて、ここからが本番です。
 ディベート方式では「決断」することが目的です。でも、これだけでは決断できません。議論をもっと深めていていく必要があります。
 どうやるのか? メリットとデメリットの両方にツッコミを入れるんです。


<賛成側へのツッコミ>


1、そもそも1キャラで活動する必要あるの? 
2、そんなにたいした問題じゃなくない?
3、たいした問題だとしても、それじゃ解決しないんじゃない?


 まぁ、こんなツッコミが行われるわけですよね。
 議論を深めるため、さらに反論します。


<ツッコミへの反論>


1、だって1キャラで活動しないと、つねにキャラの使い分けを気にしていなきゃいけないし(精神的コスト大)、表現することも分けなきゃいけないし(インプット、アウトプット量増)、他者からの安心感や信頼感も得づらいから。
2、いや、ネット社会では他者からの評価こそ「力」だよ。
3、いいや、ひとつのキャラで活動すればいいわけだから、1の問題はすべてクリアできるはずだよん。


 ふ〜、アタマが結構疲れます。ここは、だからこそ決断思考力が身につくんだぜ、というプラス思考で乗り越えます(笑)
 では、最後のステップ。


<反対側へのツッコミ>


1、新たな問題なんて生じないんじゃない?
2、問題が生じたとしても、たいした問題じゃないんじゃない?
3、重要な問題だとしても、すでに生じてるんじゃない?


 これで本当にラストです。


<ツッコミへの反論>


1、おそらくね。他者を嘲笑・侮蔑・攻撃するような発言をしない限り、炎上することはないはず。
2、大アリ。Googleの検索能力やSNS2chの収集・伝達能力を舐めてはいけない。とある学生のカンニング自慢は、あっという間に広まった。今後、彼は新しいキャラでネット活動しなおさなきゃいけない。それはつまり評価をためるゲームの「振り出しに戻る」ことと一緒。
3、ぼくの知る限りでは、まだ問題は起きてないよ。


 お疲れ様でした。以上がディベート方式の考え方です。
 これからサクッと「結論」を下します。
 

 結論。危ない発言をしない限り、1キャラのほうがトクだし効率的だ。今後は1キャラ活動をしよう。
 以上が「思考訓練」としての結論ですが、正直なところ、この決断は直感で行ってます。メリットとデメリットに点数を付けて、合計点が高い方を採用する方法もありますが、おそらくそんな客観的なデータでは納得できないと思います。最後はやはり「これだッ!」という内なる直感を信じるほかない。
 それは主観じゃないの? だとしたら、これまで考えてきたことがムダじゃないの?
 いやいや、ここまでメリットとデメリットを挙げ客観的に考えてきたからこそ、自信をもって主観的な決断できるんです。メリットとデメリットがある以上、絶対的な自信を持って決断することはできない。だけど、ディベート方式で考える前よりは自信をもて決断できるんだと思います。