帰ってきたアウトロー「ダイハード4.0」


マクレーン刑事が帰ってきた。


っと言ってみると、どこかで聞き覚えのあるようなキャッチ聞こえる。

きっと毎度同じような構成・展開で映画宣伝を垂れ流すCM

で使われてそうなんだな。(未確認)


とにかく、ジョン。君の帰りを待ってたよ。

おかえり、おかえり。


さてこの作品は、90年代を代表するアクション映画の1つで、

きっと続編の公開を待っていた人も多いことと思う。


では、ざっとストーリー説明をしてしまおう。


今回はサイバーテロが起こって、

テロリストたちがITスキルを駆使し、政府の情報機関などにハッキング

をして国家的犯罪を起こす。


例によってエリート(FBI)たちは使い物にならず、90年代を代表するアウトロー

マクレーン刑事(市警」)が事件に巻き込まれる形で活躍し、勝つ!といつもの展開

なのだが、この線で話すのは面白くないので、止めておこう。


「ジョンが勝つ」などとオチをいってしまっていいのか!、っと、一度思いとどまったが、

ジョン・マクレーンが負けかもしれない!っと純粋に考えている人は

まずいないだろうから、言い切っておきます。


っで、本作は例によってアウトローの賛美歌であり、エリートは

役に立たないという皮肉を込めたシリーズ一貫したメッセージも、

ほとんど前提としている。


これは、ジョン・マクレーン刑事というアウトローデカが主役ということだから、

言及するべき点はないので、スルー。


本作で問題点があるとすれば、それは「いつものまま」ということ。

これによって、個人的には彼の帰還を祝福することができなかった。


いつものまま?結構じゃないか。彼の帰りを待っていたんだから。

それのどこがいけないんだ?


そのようなことをおっしゃる方もいらっしゃるかもしれない。


でも、ほんとうにそのまま帰ってきてうれしいだろうか?


ジョンが帰ってくるというのは、ファンにとっては嬉しいことだ。

彼が帰ってくるから、見に行くという方も多いはずだし、自分もその一員だった。


だが、作品の構造が同じだと(陳腐な動機でテロを起こす犯人、それをやっつけるヒーロー。)

、その「展開の仕方」は見透けてしまい、見ていて飽きてくる。


ジョンよ。

君を傷つけるきはないのだが、もう食傷しているのだよ、あの展開は。


確かに次から次におこるアクションシーンでは主人公と一体感を持つことができ、

ハラハラ・ドキドキし彼を見守れるし、IT技術の最先端を思わせるようなシーンの

ビジュアルは見事で、ワクワク感が喚起され楽しなぁっと感じさせられるのは本作の美点だ。


しかし、物語がどう展開していくのか(ジョンが勝つ)が手に取るように分かってしまうと、

そこに予測不可性がないため、アクションシーンらがどれほど魅力的でも、

それを補いきれず、面白さは著しく損なわれてしまう。


オチは見えてしまってもしかたない。

ジョンが主役なのだから。


「まぁ、ジョンが主役なんだから、そういった展開にはなるだろう・・・・。

・・・ん!?あれ、あれ。これは、実はやばいんじゃないの?本当にこれ、クライマックスで

解決できるのかな?」


一度でもこのような懐疑的な状態に観客を陥れてくれたら、

もっと魅力的な作品になったことと思う。


僕らが本質的に求めているのは、ど派手なアクションシーンだけではなく、

予測できない意外性であったりする。


この先どうなるのか?

主人公はほんとうに〇〇に勝つことができるのだろうか?


サーカスの宙吊り状態のようなこのポジション(どのように展開するのか?)

に置かれたとき、観客はハラハラ・ドキドキを味わい、怖いんだけど知りたいというような

矛盾を孕む感情を味わう。


映画のアクション系、サスペンス系、ホラー系、ドラマ系の作品を

思い返してみると、そうではないだろうか?


だから物語の展開が「そのまま」という点が、問題点になのである。


ロード・オブ・ザ・リングの3部作目があそこまで大ヒットした理由は、

それまでの旅の内容にオチがつくという理由以外に、キャラクターアーク

という予測できなかった変化があった。


だれが変化したのかというと、それはサムだ。


1・2、それほどぱっとしなかったフロド邸の庭師サムが、主人のために体をはって

超巨大グモと戦ったり、長旅の疲労で体力もほとんど尽きようとしているのに、フロドを

背負って山を登るったりした。


あのシーンなどが、以前の彼からは想定外の姿であり、その変化の大きさ(ギャップ

と言い換えてもいい。)に観客の心は動かされたのだと思う。


しかし、本作ではジョンの身に起こることや、物語の展開に意外性がほとんどない。

非常に残念なことである。


ジョン・マクレーンが久々にスクリーンに帰ってきたのは確かに嬉しかった。

だが、物語の筋があまりに予定調和なため、凡庸な物語になってしまっていた。


プロットにもう少しひねりなり、キャラクターアークをつけるなりして観客の心を

宙吊り状態にできればもっと面白く魅力的な作品になったのに。

ジョン・マクレーンの帰還を素直に喜べない理由はそこにある。