フリーでシェアなビジネスモデル:『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』


『フリー』や『シェア』の次に読むべき本はこれ。


グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

  

 GoogleEvernoteDropboxが提供しているサービスは、基本的にタダで使うことができますよね。もし、それ以上のサービスを受けたい場合は、お金を払ってハッピーになる仕組みになっています。
 このように、基本的にはサービスを無料で提供するビジネス戦略を「フリーミアム戦略」(Free + Premiumの合成語)と言います。現代のネット社会ではデフォルトになりつつある戦略ですが、50年前から実践していたバンドがアメリカに存在しました。グレイトフル・デッドというバンドです。
 グレイトフル・テッドは1960年代からライブの撮影や録音を許可し、ファン同士が交換(シェア)することも許していたそうです。
 驚くべきことだと思いませんか? 
 現代の音楽産業は、50年前のビジネスモデルに追いついていないというのに。


 ぼくはいま、コンテンツをフリーで提供する会社に所属しているのですが、フリーミアム戦略ほど強力な戦略はないと感じてます。
 コンテンツはフリーですから、Youtubeニコニコ動画にアップした動画は何百、何千回と視聴され、ホームページにアップした記事なんかも同様です。
 もちろんその前提として、お客さんに求められるコンテンツである必要はありますが、それさえクリアできれば最良の宣伝方法だと考えています。
 面白かった記事は、友人やツイッターのフォロワーと「シェア」したくなりますよね。彼らはシェアされた記事を読み、面白かったら別の人にシェア(リツイート)していきます。この無限のシェアの連鎖によって、それまで自社のコンテンツを知らなかった人にまで届くことになります。その人は新しいお客さんになってくれる。
 でも、もしコンテンツが有料だったら? たぶんフリーミアム戦略ほどには届かないはずです。


 いまのコンテンツ産業は、著作権でもってガッチリ規制しています。出版や音楽業界もそうですが、とりわけ「映画が盗まれている。感動も盗まれている。私は観ない。私は買わない」という映画館で流しているCMは、自分のクビを自ら締めているようなものだと思います。映画業界を支えてくれているお客さんにケンカを売っても、良いことなんてないのに。
 映画業界が劇場での録音や撮影を禁止しているのは、映画のチケットやDVDなどの売上げを下げるからだという考え方が基本にあると思います。
 でも、逆なんですね。コンテンツをフリーで流通させたほうがむしろ儲かることを、ビートルズストーンズより稼いだグレイトフル・デッドが証明してくれています。
 

 このようにフリーミアム戦略は最強のビジネスモデルに見えますが、どこかでマネタイズ(収益化)する必要はあります。お金という交換手段がないと、生きていけないですしね。
 本書では、Dropboxのように、2GBまでは無料でコンテンツを提供し、2GB以上使いたい人からはお金をもらうビジネスモデルもあります。iPhoneのアプリでもおなじようなモデルがありますよね。


Dropbox


 最初からお金をもらおうとするのは、なかなかハードルが高い。どんなコンテンツなのか分からないものに、ぼくたちはお金を払いたがりません。一度サービスを試してみて、それ以上のサービスを使いたい場合のみお金を払う、というのがクラウドサービスやアプリを使っている者としての実感です。

  
 本書が教えてくれるのは、フリーという原理が覆う世界でのフリーミアム・モデルの作り方です。
 1998年からフリー戦略を採用し、「ほぼ日」を運営してきた糸井重里さんが、「もしドラに負けないくらいの実用書です」と紹介していますが、本当にその通りだと思います。各章の終わりで紹介されているACTION(無料版を作成しよう、記憶に残る印象的な名前を見つけようetc.)は、個人戦略としてぜひ落とし込みたいところです。
 まずはブログタイトルを探すところからかなあ。


フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

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シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略

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