オリジナルな生き方

「おれは生きたいようにいきるんだ」と自身の人生観を語る人がいる。
型にはまりたくない、好きなことを追求するという、そのアウトロー的気分は、
自分にもとてもよく理解できた。

でも、そんな甘美な理想像は、もしかしたら誰かの模倣でしかないのかもしれない、
と「独学のすすめ」を読んでいてつい先ほど思い直した。

《どんな風に生きるかを、ことごとく自分で決めることができる、と
かんがえるのは、思い上がりというものだ。人間の人生観、あるいは生き方の
理想は、どこかで、誰かから学んでいるのである。よしんば伝記を読まない
としても、誰かの人生を見たり聞いたりしながら、われわれは自分の人生を設計
しているのである。》


結局、僕らが思い描くオリジナルな生の理想像も誰かのモノマネ。

「ゴッド・ファーザー」を見たとき、マイケル(アル・パチーノ)の生き方に
惚れ、「アダプテーション」を見たとき、ジョン・ラロッシュ(クリス・クーパー)の
蘭への情熱的な意欲、独学精神に関心し、「ファイト・クラブ」のタイラー
(ブラット・ピット)が「貯金残高やモノが俺たちの価値を決めているんじゃない。
そんなものクソくらえだ」的な物質主義を排除する彼の人生哲学に深い共鳴をしたり
して自分の人生観は形作られてきた。

どのようなものに惚れるか、に各人の偏差はあるにしても、完全なオリジナルではありえない。
各人何かしらの外的情報をモデルにして、影響されて、自分の理想像を少しずつ修正しながら
人生観を育ててきているんだから。

じゃあ、オリジナル生というものを追求するにはどうしたらいいのだろう?

好きなものには、他者の欲望(@ラカン)がどうしても介入してしまう。
他者が欲しているもの、を僕らは「自分が欲しいもの」だとして勘違いしてしまう。

この自己欺瞞から抜け出すのは、やはり容易ではない。

買ってみて、「あれ、実は全然いらなかったんじゃん。」なんてことは
よくあることである。

だとしたら、好きを追求するのではなくて、キライを排除していく
(@岡本吏郎)というアプローチの仕方しかないのかもしれない。

嫌いなものにオリジナリティーは宿る。

・人の時間を簡単に奪いにくる人。価値を尊重していない人。
・お客様至上主義的価値観を持ってる人。
・ごみをぽいっと道ばたに捨てる人。
・ブランド物や高価な物で自分全体を記号化している人。

このような自分が嫌いだと思うモノや人との関わりを断っていく。排除して行くこと。

大変地味で小さい生き方ではあるとは思うけれど、見栄えはしないが自分だけ
のオリジナルな生を生きるというのは、他者の欲望を模倣しつづけるモノマネ人生より
ずっとすてきで幸せな人生だと僕は思う。

独学のすすめ (文春文庫 か 3-1)

独学のすすめ (文春文庫 か 3-1)