言うべきか、言わぬべきか。

ぐさっと胸にささる言葉というものがある。

相手が意図してか、無意識的にかに関わらず、ぐさっと胸を締めつける言葉がある。

先日友人から頂いたメールにそれがあった。
僕の現状を励ますことを目的として書かれたその言葉を読んだとき、
嬉しいというのではなく、反感を覚え傷ついてすらしまった。

その事実を彼女に言うべきか、言わぬべきか迷った。

というのも、彼女には意図的に苦しめるつもりなどさらさらなく、
ただ単純に励ましてあげようと思ったに違いないからである。

けれど、コトバとして表現されたその文章からは、激励ではなく
自己否定的な意味が見えてしまい、解釈してしまった。

彼女にこの心情を吐露すべきか、正直迷った。
相手が傷つくのは、火を見るより明らかだし、
それに傷ついたという事実を告げて、どれほどの意味があるのか
疑問だったから。

「ぼくこんなに傷ついたんですけど。」と胸の内を
明かしたところでどんな意味があるのか?
そこには、復讐心の満足させるだけの意味しかないのではないか?
それなら胸にしっかりしまっておけばいいのではないか?

結論を先取りすれば、彼女に事の真相を話してしまった。
そして予想どおり、彼女を傷つけてしまった。(自分のメールに対する
返信メールにて発覚。)

のちに考えた。
自分が発言するとき、相手がどう思うのかをいつも意識的に行っているのか。

それはないだろう。
日々そこまで頭を使って発言してはいない。

こうして傷を負って、「こうすると相手が傷つくんだな」というのろのろとした
学習プロセスを経なくては、なかなか頭を働かせることはない。

「発言するときには、なぜそれを言うのか、自分に問いかけた方がいいよ。」
などと訳知り顔で彼女を散々攻め立めてたものの、こちらにはそのような資格などなかった。

彼女にしてみたら、こちらは褒めたのに、なぜか責められなきゃいけない
のだろうと怒りすらを覚えたのではないだろうか。
まったくもって理不尽な話であり、もうメールなどしたくないときっと思われたろうと思う。

無理もないことだと思う。

しかしこちらとしては指摘しないわけにはいかなかった。

相手にとっていかに好ましくない、むしろ傷を負わせるような発言だったとしても、
今後そのような励ましの言葉を頂くごとに、傷つくことになるのだから。
(傷を受けるのは、こちらの勝手な解釈ではあるが)

あまりにエゴが強すぎると言われるかもしれない。
そのくらい、聞き流せよ。といわれるかもしれない。
たぶんその通りなのだろう。

ただ、このような手の発言で傷を負うものがいることを、彼女に理解していただくことには
多少なりとも発言の意義があるのではないかと思った。
それも事実だ。

コトバの意味の解釈の仕方は、万人によって異なる。

額面どおり、好意的に解釈する人もいれば、言葉の裏の意味を勘ぐり、
実は褒めているようで皮肉を言ってるんじゃないか、と解釈する人もまたいるだろう。

発せられたその言葉に皮肉の意味を付与したつもりはなくても、そう解釈
されることはやはりあると思う。今回の自分がしてしまったように。

今後彼女からメールはきっと減るだろう。少し大げさにいえば、交遊関係に決定的な傷を与え、
今までの関係を壊しかねない。

けれど、今現在も彼女に送ったメールをあまり後悔はしてない。

彼女のためになったろうから、という自意識過剰で道徳的な偽善的想いから
ではない。

そうしないことには、こちらが毎度その言葉を聞くたびに傷ついくことが
明らかだからである。

どう考えても、毎度傷つくことを言ってくる相手と交遊的な関係を結べるわけがない。

だから、今後も意味のある友好関係を築いていくためにも、
彼女にこちらの心情を伝える必要があったのである。

これを言ったまず間違いなく傷つくだろうなと予測可能な言葉というものがある。

99%ほどの確率で人を傷心させられる言葉をもし発してもよいとするならば、
関係当事者にとって利益をもたらす場合だというのが持論なのだが、どうだろうか?

と、ここまで書いていたところで、前述の彼女から電話がかかってきた。

内容を要約すれば、「ごめんね。」ということだった。
泣きながら謝罪してくれている彼女を電話越しに感じつつ、持論を述べ話し合って
みて感じたことがある。

持論はまったく効果的ではないということである。

結局謝罪の言葉を頂き続け、こちらはあたふたしながら無意味な言葉を重ね続け、
僕らは電話をおくことになった。

果たして、今まで述べてきた考えやそれに基づいた行動をとることが、
相互関係を向上させる策として適切だったのだろうか?

信じていたモノがぐらっとぐらついた。

正直に述べるべきではなかったのではないだろうか?
疑問が再びいくつも浮かんできて、僕にはまるでよく分からなくなってしまった。