読書感想 「決断力」by羽生善治

決断は自分の中にある
(中略)
物事をすすめようとするときに、「まだその時期じゃない」「環境が整っていない」とリスクばかり強調する人がいるが、環境が整っていないことは、逆説的にいえば、非常にいい環境だといえる。


角川oneテーマ21(新書)から出ている羽生善治棋士が「決断力」の中で語った言葉である。
グサっとみにっさる思いがした。


大学生の頃に、入学当初から一目惚れして、ずっと追っかけていた女の子がいた。
欲望に燃える10代の青年らしく、その子にどうしたら彼女にできるかを真剣に考えた。


まず服装を変えて、髪型も今風にして、お金をためてデート資金をためて、そうそう面白い話題
のためにネタを仕入れて・・、と先走った妄想ばかりをよくしていた。
当然、そんな妄想男を見兼ねた友人らは「お前、とりあえず話しかけにいけよ。そこからだよ、まずは」
と現実的な助言をしてくださった。っが、失敗したらあとがないと思っていた自分は、万全を期して
から望もうとし、その助言なんてくそくらえと思い、まるで聞かなかった。


この些細なことの顛末は、映画に出てくる情けない男の典型的青春時代の1シーンのようになった。
(そうこうしている間に、その子に彼氏が登場。自分は出る幕もなくそのまま消滅。)
このアホな経験から「完璧な準備などできない」ことを学んだ。


万全を期してから臨もうという気持ちはもちろん大切であると思う。
細心の注意を払い、できるかぎりリスクを軽減する行為はするべきである。
それなくして目標達成するのは難しい。
けれど、すべてを準備することは現実的にはたぶんムリ。
行動すれば、かならず「やばい。金が足りない」だとか「・・・」が足りないという不足感が
ついて回るから。


最近、ここが分岐点だなとよく思う。


足りないのは仕方ない。いままでやったことのないことにチャレンジするのだから、それも当然。
ただそこで「これが揃ってから」というように足踏みしていると、いつまでも現状に留まり続けてしまう。
(自分の現状)


決断とリスクはワンセットである。
(中略)
リスクを避けていては、その対戦に勝ったとしてもいい将棋は残すことはできない。次のステップにもならない。それこそ、私にとって大いなるリスクである。
(中略)
私は、積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にすると、いつも自分に言い聞かせている。


僕らが決断するのは、手にしたい目標をゲットするために行われる。


・(妄想上の)彼女との遊ぶための資金をするために、バイトする。
・知識を増やすために、幅広いジャンルの本を沢山読む。
・やりたい仕事で金を稼ぎ生きていくために、今の職場で(または転職して)修行を積む。


当然、それを行えば代価は支払わなければならない。(時間やお金や自由や挫折感や不全感、などなど)
そして失敗して、傷つくこともやっぱりどうしても生じてくる。


しかし、リスクを恐れて現状に留まっている限り、目標へ到達することはできない。
失敗しなきゃ、成長の余地がないから。そして実際にやってみなければ、失敗するかどうかもわからない。


ならば、とりあえずできる限りの準備をして、「とりあえず、これでやってみるか」
の精神で行うべきなのではないか・・・。


まぁ、こんなことはみんな知っていること。
頭のすみではわかってはいるんだけれど、実際に行動に移す勇気がない。やはり失敗が怖いから。
ここが行動できない人(自分)の本質のような気がする。


勇気ということばの「勇」とは、力と音符ヨウ(わきでる意→湧)から成り、体内から
湧き出る力という意味ということらしい。(角川新字源より引用)


すべてに勇気を持って選択できるわけではない。
チャレンジできるものもあれば、こりゃとても適わないと怖じ気づくケースもやはりあると思う。
それは仕方ない。また次の機会に、と見送ってもいいとおもう。


肝心なことはとりあえず動くこと。繰り返し、自分にとって「これハードル高いよ。難しいよ。」
とおもえるものにも「えいっ」と飛び込んでみること。すると自然と内側の勇気も磨かれてきて、
「いつもやってきてることじゃん。」などと勇気力も高まってきて、少し難しいと感じるものにも
チャレンジしていける心が育成されてくるのではないか。


「あれ難しそうだからなぁ。」とか「これはとてもできそうにないなぁ。」といった不安が心を
覆い負の感情を沸きでてくる前に、先手必勝、とりあえず行動して飛びこんでみること。
これを繰り返し行って習慣化していくが、内側の勇気を鍛え、行動するための決断力を鍛えていく
方法なのではないかと、今、これを書いていて思いついた。


決断力 (角川oneテーマ21)

決断力 (角川oneテーマ21)