「目の前にある誘惑に勝つには」・・・その2

では、今日は「勝率のあげかた」について。


単刀直入にいえば、長期的なメリットをグループ化して足し合わせる方法が有効みたい。


「いまDVDをみて満足するか。それとも英語の勉強して洋書を読める力、映画字幕に頼らず
物語を理解できる力、膨大な情報にアクセスできる力、そういったいくつも利益が期待できる
世界的言語の英語を勉強して人生を豊にしていくか」といった感じ。


なんだ、それだけ?
これをあまり甘く見てはいけない。
前述したメリットたちはあんまりうまくないけど、強引にでもメリットを沢山あげてみると、
やらなきゃ損な気がしてくるから。いや、ほんとに。


これは蛇足だけれども、メリットをあげる他に有効だと思うのは、あこがれの人や先生を発見
すること。ようは、あこがれの力ってやつ。
漠然としたものでもいいから「あの方のいる高みに少しでも近づきたい」という抽象的思い
(明確ではないゆえに、踏破することが目的ではなくなり、歩みつづけられる)があるのと
ないのとではモチベーションに雲泥の差が生じる。これはご想像いただけると思う。


本日コラムニスト、小田嶋隆さんの『テレビ救急箱』を拝読したのだけれど、私淑している先生
(と勝手によんでる)の本を読むと力の差を思い知らされ、嫌でもやる気がでてくる。
(内容は相変わらずスゴかった。テレビの悪しき点をズバっと明らかにしており気分爽快。
すごい、すごい。後日、レビューを書きます。)


っで、やり始めると、これが段々「やれる自分」を形成し始めてくる。
ようは「なんだ。俺みたいなやつでも意外とやれるのね」というセルフイメージの強化。

人は、自分の意志力について過去の実績をもとに見積もりをする。その見積もりは、自分が誘惑に耐えて
長期の利益を実現できるかという見通しに影響する。その見通しは、誘惑の相対的な大きさに左右し、それ
に耐えられるかを左右する。そしてこのフィードバックは、すぐに悪循環/好循環に陥り、ちょっとした
違いがものすごい結果の差を生み出す。(『誘惑される意志』)

このようにプラスのフィードバック効果をもたらす上で意志は有効なんだけど、こいつにも問題がないわけじゃない。


(いくつか問題はあるんだけど)一番大きな問題は、合理性の追求による意志の暴走だと思う。
ようは合理的思考の選択に固執するあまり、コチコチに固まった考え方、行動しかしなくなっちゃって、人生が面白く
なくなっちゃうこと。


意志ってのは極力無駄をなくすことを志向するから(だってそう望んでるんだからね)、一方だけを選択しがちになる。
「夜食は身体にも悪いし、お金もかかるから、絶対にたべない」みたいな判断を下す。
それが習慣になると、確かに食べなくなる。それで平気になる。でも絶対に食べないことを掟化してしまうと、なんだか
窮屈になる。たまにはハメを外さないと、疲れちゃうように、エンジョイできないんで、人生がだんだん楽しくなくなっちゃう。


アダム・サンドラーの『クリック』という映画をみると合理的思考のBADな点がよくわかる。彼はある日、クリストファー・
ウォーケン演じる科学者のようなじいさんから、現実世界の時間を早送りできるSF的リモコンでをもらう。その日からサンドラーは
、不合理だと判断する出来事はどんどんスキップさせていく。


家族との面倒な会話。・・・めんどくさいな。飛ばしちゃえ。キュルキュルキュル。
犬の散歩ぉ。これも面倒くさいな。早送り。キュルキュルキュル。
妻とのセックス。・・・いいかげん、飽きたし。じゃあ、これも早送り。キュルキュルキュル。


・・・楽しいのかね、そんな人生は。(笑)
この映画はこんな合理的思考に凝り固まった人の人生ってどうよ?楽しいと思う?という問いを観客に問うてくる。


まぁ、楽しいわけないよね。
ふつーに考えて。(ラストのほうでサンドラーは悔恨する。)


たとえば登山とかって、登頂するまでにめちゃめちゃしんどい苦労があるからの登頂したときの喜びがあるわけで、
車とかでガーーーっとてっぺんまで登れちゃったら、「登頂したぜーーー!」なんて叫んでも虚しいだけだろうし。
過程が大事なわけだよね、過程が。

人がスティーブン・キングの分厚い本を読むのも、二次元萌え画像等によるオナニーよりセックスを(通常は)好むのも、
あまり意味がありそうにない社会的な儀式やしきたりをあれこれ用意するのも、そしてこれだけビデオが普及しても人が
わざわざ映画館にでかけて映画を見るのも、時間をかけるとか、予測がつかないとか、手に入りにくい、あるいは早送り
したくてもできないという状況を作り出し、意志の暴走による合理性を阻止するためのものだった、と!(同書)


予測できることばかりってつまらない。
未来がすべてわかっていたら、それをわざわざ歩むのなんて面倒くさい。
だって結果すでにはわかってんだから。


いままで夜食を食べないって決めたけど、たまには食べてもOKみたいなゆとりを持たせて中庸を歩むのが健全で楽しく人生をおくる
コツなんだろうけどね。きっと。…って、どんだけ知ったかぶりすんだよ!ガキが生意気いいました。すいません。


ってことで、そろそろ終わりにしようと思うんだけど、なんだかとても平凡なオチ(にもなってない!)になってしまった。
どうも力不足でした。ごめんなさい!


憧れの地はまだまだずっと先だなぁ。