映画【劇場鑑賞】→『ランボー 最後の戦場』

スタローンには『ロッキー・ザ・ファイナル』で脚本やテーマのチープさにちょっとがっかりさせられた。
(ロッキーが息子にむかって「夢は願えば叶うんだ」とかそんなこといって説教していたシーン。
って、それちょっと安易すぎないか。セリフでテーマを語るなんて、『always 三丁目の夕日』じゃあるまいし。)


そんなわけでスタローンにはたいして期待してなかったんだけど、久々に劇場で映画を観たかっ
たので、暇つぶしに見に行ったらすっかり見直してしまった。


いやすまなかった、スタローンさん。
まさかこんな傑作を作ってらっしゃったとは。


本作の舞台はミャンマー
そこで田畑を耕し、ほそぼそと平和に暮らしている人々。
突然そこにミャンマー軍がいきなり襲いかかってくる。



ミャンマー軍は捕まえた農民を集合させ、田んぼに地雷のようなものをぽんぽん投げ入れ、
そこを走れと命じる。
怯えながらも銃で脅されて走る農民。地雷を踏んで被爆して死ぬものもあれば、辛くもやり
過ごすことができるものもいる。
しかし運良く地雷ゾーンを抜けたかと思った瞬間、銃弾が背中や腹に突き刺さる。背後から
射殺されたのだ。


ミャンマー軍は、その足で農村を襲いにいく。


ゆったりした時間を過ごしていた村民は突然迫撃砲で木っ端みじんにされる。
手足がそこらじゅうに飛び散り、村の女たちは強姦され、幼児は腹部に短剣で何度も突き刺さされて
殺害される。
この鬼畜集団の残虐非道ぶりは『シンドラーのリスト』や『戦場のピアニスト』などで描かれた殺害シーン
とかぶるほどハード。
ゆえに戦争ものが苦手な人には、この映像(とくに最初からの30分くらい)は耐えがたいかもしれない。


その悲惨極まる現状に苦しむ人々を支援するためにキリスト教系ボランディア集団がランボーを現地までの
案内人として雇い(現地で船乗りをやってる。なぜだぁ?)本や薬を届けにいくのだが、ミャンマー軍が
彼らは捉えられて捕虜とされてしまう。


本作のランボーのミッションは、この捕らえられた集団を救いだすことである。


ただヒーローが冒険の誘いを一度は断ることが義務であるがごとく、彼も案内人としてのオファーを一度は蹴る。
(しかし、ランボーも人の子。美女にドシャブリの雨の中、懇願されてはたまらない。しかたなく現地まで
船で送ってあげることにする。)
前三作のうち二作未見(=part2、3)なので、なぜ「最強の殺人兵器」たるランボーがなぜ船乗りみたいな仕事
をして平凡な暮らしをしているのかよくわからない。


なぜ・・・?
たぶん過去から積み重ねてきた「殺人」にある(と思う)。


以前は大佐の命令(だったよね。たしか。)で「国家のため」という大義名分を背負って闘い人を殺してきた。
が、それでも人を殺し、その人の未来や家族の一人を奪うという行為における負の一面(罪悪感)を背負うのは
国家ではなく個人だ。


彼は悩む。
いままで多くの人々を殺害し、未来を、そして家族を奪ってきたことを。


だが、今目の前で「未来を奪われそうになっている人がいる」のを見過ごすことはできない。
数々の戦場で戦い抜き、学んび培ってきた力が自分にはある。それを発揮すれば人を救うことができる。


ランボーはそこで自分を見出す。



 
 分かってるはずだ
 自分が何者か
 おまえは生粋の戦士だ


 国のために殺すんじゃない
 自分のために殺すんだ
 それは神があたえた運命




ランボーは静かにこう悟る。
そして傭兵とともに戦場へ赴く。
だが同行していた傭兵が敵の兵隊数にビビって逃げ出そうとする。
ランボーは見かけ倒しのその男にこういう。



 
 ムダに生きるのか
 生きるために死ぬのか
 お前が決めろ




ここらへんなんて鳥肌もの。
スタローンのセリフでまさか感動するとは思っても見なかった(失礼)。


一度は罪の意識に苛まれ、生きる活力までそがれた男。
彼が苦しみもだえながらもなんとか生きる意味(自分のため)を見出し鬼畜集団を征伐しにいく。
その勇姿には、やはり彷徨える子羊(笑)としてやはり感動を禁じ得ないのだ。
(これトニー・スコット監督の「マイ・ボディーガード」に登場するD・ワシントンの解脱法と一緒。
彼もダコタちゃんのボディーガードをすることに、生きる意味を見出しニヒリズムから解脱する。名作。)


あー、いい映画だった。スカっとした。


ただ恐ろしいなぁと思うのはランボーサイドに肩入れするあまり、殺人が「快楽」となってしまうことっすね。
イケイケーランボー。もっとぶっ殺せぇ。
逆襲シーンはそんな調子でボルテージも自然とあがる。
50口径のぶっとい銃でミャンマー兵士の頭を(文字通り)風船がパーンと打ち抜くシーンや、素手で敵の首を
捕まえて腕力前回で喉をガッっと引裂いたりする陰惨なところにすら爽快感を感じてしまったし・・・。


オーケー。認めよう。殺人は快楽だ。
人間のうちにすむ「ダークサイド」を見てしまったきぶん。人間って(=おれ?)こわいっす。