カースト制度ってなに→『ブッダ』

ちょっとまえまで「カースト制度」というものの意味を知らなかった。
カースト制度。なにそれ。


で、ウィキペディアで調べてみたんだけど、これがよくわからない。

カースト(caste)、あるいはカースト制、カースト制度は、ヒンドゥー教にまつわる身分制度である。
紀元前13世紀頃に、アーリア人のインド支配に伴い、バラモン教の一部として作られた。
カースト制度によって定められる個々の身分もカーストという。カースト制度は基本的にはバラモン
クシャトリア・ヴァイシャ・シュードラの4つの身分(ヴァルナ)に分けられているが、その中で更に
細かく分類されている。(ウィキペディアより)


うーん、これじゃあよくわかんないねぇ。知らない固有名詞ばっかりだし。
バラモンってなによ(ひどい!)。


で、まぁ、このままにしておいちゃ、そのうち興味を失うのは必至なんで、
手塚治虫の『ブッダ』で忘れるまえにお勉強してみようと思い全12巻を大人買い


これは面白い。
ついでにお勉強にもなる。いいねいいね。
(「自分とは何か?」「なぜ人は苦しむのか?」といった哲学的問題がマンガで楽しく学べる。すごい。)
安直かつ不遜な想いで手にした『ブッダ』なんだけど、いやはやこれは傲慢というものでした。
手塚先生、大変しつれいしました。


で、1巻から読み進めて、いま読んでるのは5巻なんだけど、ここでビックリさせられた。
というのは、苦行をすれば真理を悟れるものではないということ。


若き日のブッダ(=改名前は「シッダルタ」)たちの修行僧は、人間の苦しみ(差別、病気、老いなど)から解脱するために、
肉体を痛めつけて真理を悟ろうとする。肉体を痛み付ければ、理解出来るだろうというロジックなんだろうね。


っで、シッダルタは座布団代わりにいばらを敷いて座り、座禅を組み、二ヶ月ほど飲まず食わずで頑張るんだけど、
カラカラに乾涸びて死にそうになる。けど、仲間たちは全然助けない。むしろ、えらいなーっていって応援してる。


そこに、シッダルタに恋心をいだく少女がやってきて、変わり果てた姿に驚きの声をだす。


少女「みんなきてェ」
少女「シッダルタが死んじゃったよう」


そうさけぶと、同僚(=僧)がやってきてシッダルタを診察する。


僧「これは生きている」


少女はほっとしつつも、


「死ぬまでずーっとやらせるつもりなの」


と質問する。すると僧は、


「ああ 死ぬかもしれん」
だが尊い行為なのだよと暗に示すように、大真面目な顔をして答える。


アホか。
死んだら意味ないじゃん。


自分は肉体的に自己を苦しめて悟りを開こうとする高尚な行為・道に身を置いている。
だからその苦行をしないやつらはみんな怠け者である、というような幻想に彼らの自尊心は担保
されている。愚者を対置し、見下すことでえられる優越感。それが苦行に耐させる力となる。
つまり、蔑視しないわけにはいかないんだよね。僧たるもの。
求道者のモチベーションは、そういった構造の中に絡めとられている。


で、その奇特な姿をみて「バカじゃないの」と笑いながらアホさ加減を指摘してくれるのが、
女性なんだよね。たいてい(先日見た『悪いことしましョ』に出てくる魔女もいってました)。
おとこはバカです。


ここから知ることができるのは、「肉体の苦悩は人を真理に導かない」ということ。
ついついこんな勘違いしてしまうだけに、いい教訓になりました。


カースト制度のすさまじい実態のみならず(言及しなかったけど、そのシステムが生み出す大きな悲劇や
差別が痛々しいまでに描かれている)、そんな真理まで物語を通してGETできちゃった。


言葉の説明だとよくわからないものが、こうしたマンガという形式を利用するとそれがとってもよくわかる
っていう不思議。
どうも、僕らが何かを知るには、物語がひつようみたい。

私たちは他人に何かを説明する場合だけじゃなく、自分に何かを説明しようとする場合にも、
物語を語ります。
(中略)
「物語」の大枠が決まって、その後に現実的細部は意味を帯びるようになるのです。
「知る」ということは、それまで意味の分からなかった断面の「意味がわかる」ということです。
そして「意味がわかる」ということは要するにある物語の文脈の中に収まった」ということです。
「知る」とは「物語る」ことです。
物語抜きの地は存在しません。(『映画の構造分析』 p21-23)


カースト制だとか、ブッダの人柄とか、真理だとか、それがどういったものがただデータとして
存在しているだけでは、それがどのようなものなのか「知る」ことはできない。
何かを知るには、物語が必要になのだ。
なるほどねー。


何かを知ろうとすると、予期せぬものまで釣れちゃうこともあるのね。

ブッダ全12巻漫画文庫 (潮ビジュアル文庫)

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