読書→先生の推薦書『推察力』

あぁ、暑い。
自然発生のサウナ状態。
腕を見ると毛穴から汗が噴き出だしてる。すごい。
しばらくまえに冷蔵庫から取り出したペッドボトルについてる水滴みたいだ。
額からは汗がしたたる。ただ椅子に座ってるだけなのに。
汗っかきにはしんどい季節だ。
カフェではいくら椅子が空いていてもだれも寄り付かないし。
早く去ってくれ、夏よ。



さて。
読書の秋の前到来のまえに、中村俊輔著の『推察力』を読む。
ジャーナリストの日垣隆さんとの共著『世界一利益に直結する「ウラ」経営
学』を上梓された作家兼コンサルの岡本吏郎さんのおすすめの本である。哲
学から経済学、経営学、物理学、心理学、歴史学などどれだけの学問に通じ
ているのか底が知れない博識さが伺える先生が「参ったね」(=すごいって
ことです)と嘆息させられたというほどの本ならば読まねばなるまい。メル
マを拝読してなきゃ、俊輔の本は手に取らなかったから、感謝。ついでに自
分の偏見を発見する。



で、読書感想。
一体どこがスゴイのかまるでわからん。降参です。
先生が「参った」という俊輔のスゴさが皆目見当がつかない。
いや、ま、たしかに「すごい」という前提条件からして誤っている可能性は
ある。
たしかにね。



それに「だれだ。岡本吏郎って?」と先生を知らない人には、そもそもなん
ら説得力を持たない。ギリシャの哲人アリストテレスが喝破したように、説
得のには論者のエートス(信頼にたると思われる性格)が肝心。みのもんた
が「奥さん、ねぎっていいんですよ」と悪代官顔で消費を迫れば、多数の主
婦に受けるのは彼の性格が信頼されてるからである(笑)。皮肉を言ってす
まない。暑さのせいですよ。つまり素性のわからない(知らない)者の発言
は信頼されず、好感や信頼を抱いている相手なら、受け入れやすい、という
そういってしまえば当たり前のことを言ってるんですね。みのさん。とばっ
な批判をしてしまいすまない。

で、仕方ないんで以下に先生が惹かれたのではなかろうかと推測した卓見を
引用してみる。



・足りないものがわかれば、それを埋めることを考えればいい。
何もわからないより、よっぽどすばらしい。



・壁があるほうが僕は落ち着く。どんなに分厚い壁であっても、それから逃
げることはない。逃げようという気持ちもおきない。どんなに困難で、たと
え、ぶつかって砕け散ったとしても、�ぶつかった�ことで得るものがある
から。



・ただがむしゃらに朝練習や真っ暗になるまで自主練習をやればいいってこ
とじゃない。大事なのは常に未来を察知して、自分には何が足りなくて、何
が必要なのか、危機を察知して準備すること。周囲の空気を読む、察知する
力の重要性ということだ。



・書くという作業をすることで、自分の気持ちや考え方を整理できる。



・僕が望んだのは、レベルが上の選手たちの中で練習することだった。
「今日の練習で手を抜いたら、次の試合に出られなくなるんじゃないか」と
いう危機感が日々続くような生活を送りたかった。
そういう環境に身をおかなければ、自分が伸びないことを知っていたから。



・「もっとやらなくちゃいけない」という欲が薄れてしまうことが、僕は怖
い。


引用してみて気づいたのだが、結局ビジネス書をぱらぱら捲れば散見される
であろう知見しか見当たらない。このどこがスゴいのだろう。まったく理解
に苦しむ。
そう入力し終えて徒労に終わったところで、はたと気づく。
さきほど線をぐりぐり引っ張ってきたところは、今まで自分に見えていた知
見であり、それ以外ではない。

そうなのだ。
自分が知ってること、また関心のあるところしか目に入らないのだ。
歩きなれた道をてくてく歩いていたら突如猛烈な腹痛に襲われ、冷や汗をか
きながら腰をくの字に折りながら最寄のトイレを探し求めたとき、突如とし
て砂漠に現れるオアシスのごとくコンビニが目の前に立ち現れることがある。
僕らは突然の幸運に感謝しながらはぁ〜と幸せな吐息をもらしつつ用を足す。
が、あれはただ幸運だったというわけではない(もちろん運もあるだろうが)。
そうではなく降りかかってきた問題(腹痛い)を解決(トイレを探せ)した
いという問題意識が浮かびあがり、それによってそれまで何度も歩いていな
がら見えていなかった(知覚していなかった)コンビニが見つかったのであ
る。コンビニなんてそこらへんにあるから、注意してなきゃなかなか目につ
かないものだし。
ゆえに、俊輔が執筆した本が駄本であるわけではない。
本のスゴさが見えないのは、読み手の問題なのだ。
たぶんね。



しかし、この結論が飛躍してるのは知っている。
うん。強引すぎるよね。たしかに。
それにこれでは前提条件のそもそもスゴい本なのか、に対する解答にはなら
ない。
けど、岡本先生が本書から抽出したであろう知見を発見できなかったものに
は、これ以上本書から教訓を見出せないのですよ。そう。負け犬の遠吠え。
だけど無駄ではないじゃない。
"ぶつかった"ことに意義があるんだから。
俊輔さん。あなたの言葉をを汚してしまった。すまない。