非モテ男のためのラブストーリー

 『40歳の童貞男』や『スーパーバッド』、そして今冬劇場公開される『無ケー
カクの命中男/ノックトアップ』『寝取られ男のラブ♂バカンス』を制作している
ジャド・アパトーの『フリークス学園』をみる(それにしても、ひどい邦題だ。こ
れじゃあ、お客さん入らないでしょ)。
 といっても、これはDVDレンタルされてない。以前、日本テレビ系列で放送され
ていたらしいが、見るすべがないので、ニコニコ動画にお世話になることにした。*1


 出てくるのは、冴えなくて、ブサ面で、まったくモテないオタク子どものような
三人組。クラスの隅っこのほうでひそひそ話をして盛り上がり、ときにクラスメイ
トの男たちにイジめられたり、バカにされてるようなタイプの男の子たち。いるよ
ね、こんな男の子たち(←っていうか、それオレ。涙)。
日本に彼らのようなタイプを主役にしたドラマあるんだろうか。ジャニーズ俳優を
使って、三枚目路線を狙ったドラマなら知ってるけど、心も顔も自前の俳優(心は
役だけど)を主役に起用しているドラマをぼくは寡聞にして知らない。


 で、これがすんごい面白い。
そもそも、アメリカのドラマだと『OC』だとか『ビバリーヒルズ白書』なんかを思
い出すけど、あんなイケメンたちのドラマなんか、一般人にはまったく関係ない。
つまらなくはないけど、こころが揺さぶられるような体験はできない。だって、イ
ケメンじゃないから、モテで苦しむという経験がないのだから仕方ない。
翻って『フリークス学園』の主役たちは、ダサダサでまったくモテない面々。よう
するに、われわれ一般人に限りなく近い人たちなのだ。面白くないわけがないのだ。

 このようなモテない人たちを非モテ、つまり「モテない男たち」といい、本作は
そのような人たち(つまりわれわれを)ターゲットにしたラブストーリーなんだそ
うな。
 そもそも人類の大多数がブサ面ばかりなんだから、彼らが日々辛酸をなめ続ける
話に共感できない人の方がすくないはずなのだ。けど、日本ではまったくこんなお
話は作られない。なんでなのかね。きっと当たると思うんだけど。


 恋愛至上主義(@本田透)である日本では(きっとアメリカもそうなんだろう)、
顔が整っていることがステータスになるし、憧れの対象となる。中身はなんだって
いいのだ。カッコさえよければ(本田氏は、このような状況を「顔面カースト制度
と呼んでいた。うまいね)。そして、イケてない多くのブサ面は、たとえ心がキレ
イでもトップ階層に君臨するイケメンたちには勝てない。そもそも女の子たちが相
にしてくれないのだ。あんた、キモいわよ、と顔だけで判断され切り捨てられイケ
メンに走られる。涙。従って、キモ面あるいはフツーの男たちは恋愛市場から閉め
出される。こうしたモテない男たちは、とうぜん恋愛経験が少ないから、恋愛偏差
値が低い。
本作はそのような人たちに対して、「人を愛するとはなにか」「恋愛とはなにか」
といったことを教えるためのド教育的ドラマであり、ジャド・アパトーという人は、
非モテの人たちに向かってそのようなメッセージ込めた作品を作り続けてるんだと
か(@町山智浩)。なるほど、どおりで勉強になるはずだ。


 とにかく非モテの人はこのジャンルのものを一度見てもらいたい。きっと後悔し
ないはずである。とりわけ、いつも男同士でつるんでいた少年達が、大人になるた
めに少年期との涙の決別(イニシエーション)をすること描いた『スーパーバッド』
は涙なしじゃみれない傑作であるので、是非。


 ちなみに、これらの「非モテ」ジャンルに関して、町山智浩さんが34分間もしゃ
べり倒しているので、そちらを参考にされるとよいと思う
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20081017)。
ただ一点、傾聴される前にアドバイスさせていただきたい。しっかり厚手のコート
などを着込んで、カラダがぽかぽかする状態になってから聴かれることをおすすめ
したい。
 なぜって?
外はずいぶん風が冷たくなりましたからね。寝間着でツタヤに駆けつけるには、も
うしんどい季節ですからですよ。