生きづらさの正体「健全な肉体に狂気は宿る」


タイトルの副題に「生きづらさの正体」とある。副題に惹かれた。
本書はフランス現代思想が専門の内田樹(たつる)さんと、精神科医春日武彦さんの対談本。
今を生きる者の処世術として役立つ。
たとえば、カテゴリーの落とし穴について。


ちょっと前までTVなどで「勝ち組」「負け組」という枠に人々を当てはめて、これはいいだの、悪いだの説明する光景あった。
あれなんかは適切な集団名称だと内田さんはいうんだけど、でもそういったカテゴリーに進んでくくられてしまうと、生きる選択肢もそれなりに限定されてしまうと指摘している。

それに対する処方箋は、

結局、どんな年齢であろうと、社会的立場であろうと、最終的には「私は私」というところで踏ん張るしかないんですよ。


こういったことは、もともと当たり前の価値観なのかもしれない。
誰しも分かってること。(でもこういわれると、自分の価値観で生きていいんだよね、と再確認できて安心したりする)


ただ、いま多くの情報が氾濫し、多くの言葉が僕等の耳の中に侵入してくるもんだから、なにが良くてなにが悪いのかが判断しづらくなってきている。これが生きづらさの一つの側面なのかもしれない。そういった、当たり前(常識)をいまの時代で起こっていることを問題として扱い、解き明かしてくれる。そしてこの方たちが語る言葉は、決してうそ偽りを言っていない。正直に自分の心や人との付き合いづらさについて本心から語っている点に誠意を感じられる。そこも好き。