『無ケーカクの命中男』

『無ケーカクの命中男』(原題:Knocked Up)★5


●「あなた、困ったわ。またうちのタケシが、お隣の木村さんの郵便ポストを壊しちゃった
みたい。
わたし困っちゃったわ。だってご近所さまに会わせる顔がないんだもの。」
個人が生きる社会には、常に世間がある。
世間とは、「個人個人を結ぶ関係の環」(@阿部謹也)のことであり、もうすこし敷衍し
ていえば、自分が関わるコミュニティ、つまり会社とか友達とか近所と個人との関係のこ
とである。
で、その世間では「年功序列」(オールドな人ほど偉い・強い・威張れる)が基本である。
だから入社したての新米は上役に文句など言えない。
それが世間の基本である。
しかしアメリカはちょっとこの「世間」の事情が日本と違うのかもしれない。
23歳のベン(セス・ローゲン)は同居人の男友達と「スターの裸ドットコム」という俳
優の裸が出てくるカットを調べ上げ、webにアップしてビジネスにしようとしている。
その裸シーンのリストをつくるため、おのおの調査してきたデータをみんなに発表するシ
ーンがすごい。


ジェーソン・シーゲル「下の毛も赤いジュリアーンムーア。「ジョート・カッツ」。2時  
           間17分。毛だけ。オッパはナシ」
セス・ローゲン   「あの毛はショートカッツって感じじゃないぜ」
全員        「ハハハハハ。ナ〜イス」
セス・ローゲン   「彼女の赤い茂みは「シャイニング」の生垣迷路だ」
全員        「ブハハハハっ」


『トロピック・サンダー』でベン・スティラーショーン・ペンをおもいっきりバカにし
レベルの(衝撃的なという意味で)強烈な一撃。
こんなのが何回もあるんだよ。
おい、あんた業界でちゃんと生きていけるのか、と観客をひやひやさせる自意識の頑丈さ
には負けたぜ>ジャド・アパトー


●1万4千ドルの貯金(←交通事故を起こしたときに国から支給された)を食いつぶしな
がら生きてる無職の男ベンが、クラブにいた美人TVキャスターと酒の勢いでセックスしちゃ
う(=奇跡)→予定外の妊娠発覚!→大げんか→口論しながらも交際、という過程を経ていっ
ぱしの大人に成長していくという「非モテ男」の成長物語として本作もやはり傑作だろう。
モテない男必見の恋愛学習映画を撮らせたら、いまアパトーを凌ぐ作家はいないんじゃな
いか。もちろん、それだけじゃないしに、いつものように生々しいバカで下品なダイア
ローグもたっぷり入ってる。
(彼女の妊娠が発覚したことで、友人がセル・ローゲンを攻めているシーン)
「ゴムをつけるのは常識だろ」
「せっかく”コストコ”で一年分買いだめしたのに」
「ありえない失敗だ」
「面倒を回避するには日頃からの学習が肝心だぞ。
 女が上なら妊娠しないんだから。重力が働くからな」
「こんなのは、もはや常識だぞ」
もー、さいこーにバカ。


カメオ出演ジェームズ・フランコ、スティーブ・カレルなど豪華俳優陣が登場。
突然の登場に映画ファンはついついニヤりとさせられてしまう。