『バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争2007-2008』


バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争!<邦画バブル死闘編>2007-2008年版 (映画秘宝COLLECTION 38)

バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争!<邦画バブル死闘編>2007-2008年版 (映画秘宝COLLECTION 38)


邦画、それも主にテレビ局主導映画はなぜかくも酷い映画をたくさん世に送り出すのか。
「白馬で新雪スキーをするために高射砲でゲレンデを射撃する」とか「悪の学長と正義の
ラクロス部員が抱き合って幼児に返る」とか「区役所の職員がスーツの上にツナギを着て
ゴミ収集をしている」など(ネタ元わかる?)のありえない映画がなぜこう多く作りださ
れているのか、その謎の解明が主眼らしい。
うん。
よい試みだ。
邦画すべてがダメなんてことでは全然ないけど、『恋空』や『ICHI』みたいな作品が作ら
てしまう原因が判明し、撲滅されるならだれだって歓迎するところじゃないか(しかし、
それはとても困難だと巻尾のサマリーを読んで思い知った)。


以下、本書の魅力を箇条書きにしてみる。
(本書は映画秘宝の巻末で鼎談していたものを加筆修正して書籍化したもの。)


・明らかにハズレだと分かっている作品にも焼死覚悟で飛び込んで行く殊勝な姿勢。
・りっぱだね。
 オレも一度『どろろ』や『陰日向に咲く』などにチャレンジしたけど、あの体験を機に 
 ますます邦画がトラウマになってしまった。瀕死が必死なのに火中に飛び込むその勇気。
 敬服いたします。
・膨大な知識量に裏打ちされた批判ってのもグッド。
 脚本、演出、演技力、カメラアングルなど多面的な視点から邦画を斬れる。
 プロだから当たり前だけど、自称評論家にはできない芸当。脚注にあげられている作品
 名、参考文献も参考になり、勉強になります。
・しかし、なんといっても、権威を恐れずに斬ってしまえる器の大きさが買いだね。
 宮崎駿押井守北野武と巨匠の作品の瑕疵を指摘するのに物怖じしない勇気には感服
 しますよ。
・組織に所属していない(のか知らないけど)自由業の強みか。
・しがらみがない=本音をどんどん言っても大丈夫、と。
・それには、言いたいことを我慢できず口にしちゃう本音気質が必要なんだろうけどさ。
・圧力からの解放されたものたちのブチまける邦画批判はだから愉快痛快。
・すばらしい。
・爆笑ポイントは『L change the world』に「オレはFBIだ」といって登場するというの
 ナンチャンの話。ナンチャンがFBIって…。
・注意すべきは、あんまり面白いので、その場面を無性に確認したくなる副作用あり(ほ
 か、国際問題レベルと認定された『少林少女』なども覗き見したくなる)


ありえない描写が頻出する問題作が排出され続ける謎(構造)については、巻末の要約で
わかるようになってる。
なるほどね。
まぁ、しかし、われわれのような一般読者には構造などどうでもよいことかもしれない。
わたしたちが読みたいのは、散々な目に合わされながら、その悲惨な体験を上手く言葉に
して批判できない批判技術の不能さに対する苛立ちを解消してくれるものだから。
その意味では、本書はその目的をかんたんに達成していると言ってもよいと思う。
邦画の毒にアタった方。
救急箱はここに↓。


バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争!<邦画バブル死闘編>2007-2008年版 (映画秘宝COLLECTION 38)

バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争!<邦画バブル死闘編>2007-2008年版 (映画秘宝COLLECTION 38)