「よりよい」を目指すから悩みは生じる→『BRUTUS 2/15号』


BRUTUS ( ブルータス ) 2010年 2/15号 [雑誌]

BRUTUS ( ブルータス ) 2010年 2/15号 [雑誌]


これはぜひシェアすべきアドヴァイスだと思ったので引用しておきます。
(以下、糸井重里さんの言葉)

 悩みって、本当はどうでもいいことも多いですよね。
なぜなら、だいたいの悩みは「よりよい」を目指することにあるからです。例えば、次の
「人はなぜ、働くのか?」のページにある、吉本さんの「泥棒して食ったっていいんだよ」
という言葉は、たくさんの悩みをほとんど捨てさせてしまいます。
 つまり、自分の横を見たら、それだけで悩みがはじまってしまうんじゃないかなぁ。横
を見たとたん、AさんBさんが気になるし、CさんDさんを見たらXさんが出てきちゃう。
横を見ることに忙しくて前は見えず、その場で足踏みするしかなくなります。
 いまはそのほうが商売になるから、横の話題が扱われることが多いです。横を見ていた
ら、本だって、いったい何冊読めばいいのか、わかりません。「いま読んでいる分であな
たがいっぱいだと思ったら、それはもう、いっぱいなんですよ」と誰かが言ってあげない
と「足りない」「もっと読めばわかる」「寝なきゃいい」と考えてしまいます。結局は過
剰な情報を入れて、それが溜まって、やがて具合が悪くなることだってあります。
 横を見るより、前後をみるといいんです。後ろを見るときには、「自分もあのときそう
だったな」とかね。
(中略)
 ぼくは「悩みは他人事だと思いなさい」と言います。悩みを客観視できる目玉を手に入
れたら、解決するはずです。(p24-25)


左右ではなく前後を見る(自分の現在と過去とを比較する)。
たったそれだけのこと。
しかし、それがとんでもなく困難なのは、過度な競争意識に覆われた世界の住人だからか
もしれない。
他社との比較、他人との比較が常に内外(自分と他人)から要求され、そこに自らの優位
性を発見することをもとめられる。
もっとやらなくちゃ、もっと勉強しなくちゃ、もっと頑張んなきゃ、と心にインストール
された強迫観念はぼくらを忙しなく急き立てる。
で、死にそうに疲れる、と。
しかし「もうオレ無理だよ」との文句は不思議と出てこない。
それはぼくらの意識には上がってこない。
もしその言葉を口にしてしまったら、もう走れなくなってしまうことをぼくらは直感的に
知っているのだと思う。


恫喝系の助言(「〜しなさい!」)が何かと跋扈するなかで、糸井さんは無茶な叱咤激励
はしない。
むしろぼくらの生に寄り添ったところから、温かい眼差しで本質を穿ったアドヴァイスを
してくれる。
それがとても温かいから、すこし身が軽くなる。
こういった先輩がいるということは、ほんとうにありがたいことだと思う。