他者と良好な関係を築く→『2日で人生が変わる「箱」の法則」


2日で人生が変わる「箱」の法則

2日で人生が変わる「箱」の法則


雨が降っている日だった。
ようやく電車がプラットフォームにやってきて、座席に腰をおろすことができた。
ふぅと一息ついたところで、電車のドアが開く。
すると、おばあちゃんが自分の目の前にやってきた。
腰が曲がっていて、立っているのもしんどそうに見えた。
「席を譲るべきだ」
とぼくは思った。
けど、あれこれ悩んでるうちに、おばあちゃんは次の駅で電車を降りていってし
まった。
「ま、仕方なかったよな」
とぼくはぼくにフォローの言葉をかけた。


という経験は、ほとんどの人がされたことがあるのではないか。
ぼくにはこの手の経験がいくらでもある。
で、そのとき、決まって、
「あれは仕方なかったんだ」
「だって、おばあちゃんだって、すぐに降りて言っちゃっただろ」
って、自分の行為を正当化する。
そうして、ぼくはだんだんウソをつくのがうまくなっていく。
スガシカオの詩みたいだw


で、そのとき、おばあちゃんは「人」ではなく「物」として扱われている、とかの
哲学者、マルティン・ブーバーは言ったそうな。
つまりね、おばあちゃんを「人」として見ていたならば、相手の様子などを察して
思いやったりするけれども、「物」としてみるならば、目前にいるのは自分の良心
をぐさぐさ攻める「物」であって、排除すべき「物」になるわけですよ。
「なにも悪いことしていないのに、オレに罪悪感を感じさせやがって」
と。
まぁ、そこまで怒りはしないでしょうけども、目ざとい物にはなるわけだ。
で、このとき、ぼくらは「箱」の中に入り、その中から人を「物」としてみている
と本日の感想本*1はいうんだよね。
そのまえに、まず箱という概念の説明が必要だね。


箱というのは、他者との関係性の比喩のこと。
箱の外にいるときは他者に対してやさしい気持ちでいられるけど、箱の中に入っ
ちゃうと他者に対して敵対的な気持ちになる(自己中、といってもいいかも。
って、死語だね、これ。)。
考えてみると、恐ろしいことに、ほとんどの「人」を「物」として見ているかもし
れない。
ほら、いちいちさ、会社で少しだけ見たことある人だとか、そこまでいかなくても、
スタバの兄ちゃんだとかに対して「物」としてみてることってあるじゃないっすか。
だから、平気でクレームつけたりできる(ぼくは気が弱いから、チッて舌打ちする
くらいだけど)。
「ってか、いちいち「人」とみなしていたら、やってられないよ」
でもね、それが往々にして問題を引き起こすらしいんだよね。
だって目の前にいるのは「物」なんだから、相手の感情などお構いなしなわけだよ。
「まったく、物のくせに、生意気な」
みたいに、腹立つわけですよ(「物」っていう意識じゃないだろうけど)。
でも、それって穏やかじゃない。
そのようなスタンスで他者に接すれば、友好的なコミュニケーションは望むべくも
ないのは、経験済みかと。
むしろ、好戦的になるんだよね。
で、互いに傷つけあってしまう(あぁ、甦る、痛い記憶…)。
このような思い上がった行動を引き起こすのは、他者を「物」としてみるからで
あって、それはつまり箱の中(自己正当化)に入っているからだっていうんだよ。
とすれば、箱の外(他者を「人」として見る)に居続けることができれば問題は生
じない、とそのようなことになる。


問題の解決方法はコチラ。


1箱の兆候を探す(箱は大きくわけて4つのタイプがある。「優越」「当然」「体
裁」「劣等感」)
2箱の外の場所を見つける(ぼくは「箱の外の場所」をもっている。それは、特定
の人との関係だった、許された記憶だったりする)
3状況をあらためて考える(箱の外から、物事をとらえなおす)
4見つけたことを行動に移す。=私がすべきだと感じていること


ざっくりいえば、こんな感じ。
といっても、このままじゃわかんないとおもうので、解決法を詳しく知りたい方は、
本にあたってください*2


っていうかさ、そもそも、なんで僕らは箱の中に入っちゃうのかね。
というラディカルな疑問が湧いてくる。
そういえばそうだ。
なぜ、ぼくらは箱の中には入ってしまうのか。
それは自分の気持ち(「これは正しいことだという自分の気持ち」)に背くから。
前述の例でいえば、おばあちゃんに席を譲るべきだと思ったのに、それを実行せず
に裏切ったことが原因。
だから、箱の中にはいって、自分を正当化するのに躍起になる。
「オレには明日、重要な案件があるのだ」
「自宅に帰ってから、まだ子供の相手しなきゃいけないんだよ。だから勘弁してよ
>おばあちゃん」
みたいにね。


もし自分の気持に沿って行動していたなら、こうした自己正当化は起こらない。
とすればだよ、自分の気持ち正直に振舞うことが大事、というひどく退屈で平凡で
気恥ずかしくすらあるオチに行き着くことになる。
でもね、おそらくこれしかないんだよ。
そして、それには他者を「人」として見る必要がある。
自分とおなじくらい重要な意味を成すために生きている「人」なんだ、という認識
が。
さすれば、他者との良好な関係を築くための土台が築かれるでしょう。
言うは易く行なうは難し、ではありますけれども。

*1:『2日で人生が変わる「箱」の法則』

*2:欺瞞ではない感動的な話が盛りたくさん入っていて、とても説得力があります。それがこの他者との関係を良好に保つメソッドの説得力になってます。