数字はレトリック→『食い逃げされてもバイトは雇うな』


食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 〈上〉 (光文社新書)

食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 〈上〉 (光文社新書)


 このタイトルの意味するところは、「食い逃げ防止のためにバイトを雇ったほうが結果的には高くつく」というものです。
 割りに合わないんですね、290円の牛丼の食い逃げを防ぐために、1時間800円のバイトを雇うことは。
 かりに1時間に1杯食い逃げされたとしても、510円の損出です。だから「バイトは雇うな」なんです。


 著者は数字には4つのルールがあり、それを使うと主張に説得力が出せるといいます。

4つの数字ルール


1 順序がある
2 単位で意味を固定する
3 価値を表現できる
4 変化しない


 このなかでもっとも重要なのは、2の「単位で意味を固定する」です。
 これは身近なところでよく使われてます。ケータイのパケット量なんかそうですよね。
 ぼくはソフトバンクiPhoneを使っているんですが、12,250パケットまでは1,029円で使えることになってます。

 http://mb.softbank.jp/mb/price_plan/3G/packet

 これだけのパケット量を使えるなら、ずいぶん使える気がします。でも、パケットという単位をバイトに換算してみると、


1パケット=128B(バイト)
12,250パケット=1,568,000B=1531KB(キロバイト)≒1.5MB(メガ
バイト)


 となります。
 一般的なメールがおよそ200〜300KBかかるそうです。するとメールを5回送信したら1.5MBを超えてしまいます。だから単位をイジるんです。だから「パケット」なんですよね。 
 パケットなんて単位は日常的に使いませんから、どのくらいの数字なのかイメージできません。
 つまりよくわからない単位を用いることで、それがどれほどメールやネットを使用できるのかを曖昧にしてるんですね。
 メール5回分を12,250パケットと表記することで「お得感」を演出してるわけです。ぼくたちはそこに可能性を感じてしまう。メールやって、ネットみて、YouTubeで動画見て、みたいに。
 でも、実際はメール5回です。
 このように単位を別の単位にすることでお得感を演出することが多々あります。
 「タウリン1000ミリグラム配合」って書いてある飲み物があります。なんだかものすごく沢山のタウリンが摂取できるて身体にいい気がします。が、あれは要するに1グラムのことですよね(笑)。
 大きい数字にぼくたちは弱い。

 数字は言葉の一種です。
(『食い逃げされてもバイトは雇うな<上>』p.24)


 数字はレトリック。
 使う側としても使われる側としても覚えておきたいところです。