カラフルなじぶん→『カラフル』
クレヨンしんちゃんで金字塔を打立てた原恵一監督の『カラフル』を観てきました。
原恵一の作品はクレヨンしんちゃんの「オトナ帝国の逆襲」と「戦国大合戦」と、あと
は「河童のクゥと夏休み」を観たくらい。
で、今回の『カラフル』。
タイトルにカラフルとあるので、人生の多様性を表してるのかなぁと予測してたら当た
らずも遠からず。
人生ではなく人間でした。
人間というのは外の世界にいる人たちだけじゃなくて、自分のなかにも「他者」という
不可解な存在を抱えて生きていて、ときどき自分でも理由がわかんないことしちゃう。
よく分からない存在ーそれが他者です。
いまはもうないんですけど、昔は「確固たる自分」というものを探していました。
オレは○○なヤツである、という揺るがない自分というものが欲しかったんですね。
でも、ちょっと長く生きていればそんなものはどこにもないということが分かってきま
す。
そのときどきで「自分」なんかいくらでも変わってしまう。
女の子の前だとヘラヘラして、母親の前だとちょっとツッパって、友だちの前だハシャいでしまう。
自分というのは色のように多色(たくさんの自己がある)であってそれでいい。
原監督はそのように自己の多様性(カラフル)を肯定的なものとして描いていました。
原監督はクレヨンしんちゃんを撮っていただけあって、ほんとうに中流階級の家庭(つ
まりふつーの家族)の描き方がうまいです。
この映画の主役である小林真(まこと)は、実は睡眠薬を大量に飲んですでに自殺して
いるんですよ。そこに大罪を犯して死んで魂と化していた人間の魂(これが本当の主役)
が真の身体に入り込んで彼の人生を生きようとするんですが、彼は別の人間なので真がど
ういうヤツか分からずに混乱します。
とりあえず生活しだしてみると、一見なんの問題もないように見えた小林一家は、じつは大きな問題を抱えてことがわかってくる。
じつは家族が離散寸前の危機に陥っていた。しかし真の自殺→復活をきっかけに、家族の絆がつよまり、修復への道への向かい始めます。
小林家には「どうやったらこの問題を解決できるのか?」という難問が一つあり、真はずっとひっかかりっています。
その家族とはなんの関係もないはずなのに、すごくムカつく。その苛立ちが反発というかたちになって家族を大いに苦しめます。
原監督はその問題をすぐには解決させません。ずっとずっと引っ張ります。
そしてその難問が解決するのですが(キーワードは「肉まん」「フライドチキン」、そ
れに「友だち」です)、その描写がネ申でした。
それらがきっかけとなり、家族の関係も修復されます。
この回復シーンは家族で鍋を囲んでいたのですが、ここ、すごいです。ただ鍋を囲んで、家族が会話しているだけなのですが、これほどすごいシーンはなかなかお目にかかれません(これ以上言語化できないので、当否は劇場でw)。
つい堪え切れず嗚咽して泣いてしまいました。
「人はひとり生きてるわけじゃない」ってよく耳にしますよね。
けど、ぼくらはあまりそれをうまく実感できない。どうも自分ひとりで生きているような気がしちゃう。
自分ひとりで生きているようでもじつは誰かに支えられていることを、そして他者との
関係性によって自分という存在が保証され生かされていることを知れます。
なんか思い出したらまたうるうるしてきちゃいました。
とゆーかですね、そのシーンを含めて半分以上は半泣き(か号泣)してたんですよね(笑)
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