『ハート・ロッカー』



 すんごく面白かったです。
 まさかここまで見れるものだとは思っていませんでした。
 おそらく戦争映画である以前に、ひとりの男の成長譚だからではないかと。
 

 以下、考えたこと・気付いたこと・気になったことのメモです。


・自己チューで自信たっぷりな男が絶望の淵にまで落ち再び○○する話。


・主人公がタフ(爆弾なんか怖くないぜ!)なのは、特権(差別)意識による。

「どうだ、オレの爆弾処理のテクニックは。すごいだろ!」

という優越感を示したい。おそらく彼は死が怖くないのではなく、死ぬかも
しれないという可能性すら考慮しないほど自信に満ちあふれているのだと思
う。逆に戦場にいる兵士たちは死を恐れている。それは死への恐怖だけれども、
現実を知っているからこその恐怖である。主人公は「オレの世界」に浸りすぎ
ていて現実がまったく見えていない。むしろ現実を見ることを拒否している。


・後半の決断はアイデンティティの問題か?


「人は歳を取ると好きなことを忘れてしまう。オレの歳になると残るものな
んて一つか二つだ」


といったカットの次に戦場に上陸するんだからそう読み取っても問題なさそ
うだけど。


・緊張感が張りつめたシーンでドクンドクンという心音がする。緊張感がよ
り高まる仕掛け。常套手段。


・冒頭で爆破で人が死ぬ印象的なカットがある。後半にも似たようなカット
がある。
 せっかくオープニングに似たカットがあるんだから、対比させれば演出的
に効いたんじゃないの?


・冒頭のシーンで死ぬのがいまいち理解できない。衝撃波で致死的ダメージ
を受けたってことなんだろうけど、いまいち映像に説得力がない。
 だから、その後の展開で「えっ!」とおどろいた。この映画で一番驚いた
のはここ。


・なぜイラク人はアメリカ兵を殺そうとするの?憎いからだよね。けど、そ
れは「アメリカ」という国(全体)がであって、現場で働いている「兵士」
(個)が、ではないよね。けど、向こうはアメリカ兵だからという理由で攻
撃してくる。爆弾を埋め込んだりして。それを処理するアメリカ兵。すごく
矛盾(皮肉)した空間だ。


・ガチガチの「軍人」(デヴィット・モース)が出てきたときは吹いた。
ちなみに軍人とは、勝ち負け、数の大小。それを尊ぶ者のことで、それ以外
はくだらないと考える人のこと。 


「いままでにいくつ爆弾を処理した」
「(明言を避けるように)たくさんです」
「これは大佐の質問だぞ」
「…873個です」
「873個!すごいな!
(部下をじろじろ見渡たして)な、すごいだろ。わっはっは」


ハート・ロッカー [DVD]

ハート・ロッカー [DVD]