世界や自分から発見するために:『「意識の量」を増やせ!』


「意識の量は社会力だ」と著者は言う。


「意識の量」を増やせ! (光文社新書 522)

「意識の量」を増やせ! (光文社新書 522)


 なるほど、たしかに意識の量が多い人はよく気が付く。夏日には「冷たいコーヒーでよろしいですか?」と先読みしてくれる。少ない人はあまり気が回らないものね。


 意識の量は多いほどよいと僕は思う。それは世渡り上お得だからというケチくさい理由のほか(笑)、いろいろな発見があって楽しいから。著者の言い回しを借りれば、「意識の量とは発見力」でもある。どれだけ対象に意識的であるかによって、得られるものは変わってくる。


 具体例を引こう。本書ではプロゴルファーの宮里藍選手の練習法が紹介されている。宮里選手は「太極拳スイング」と名づけた超スロースイングの練習をしているらしい。通常3秒で振り切れるところを、1分もかけて行うそうだから、超遅スイングだ。


 なぜ、何十倍もの時間をかけて素振りするのか?

スローな動きにすることで、すべての瞬間、全身に意識を張り巡らしていることになる。(p.66)

一つひとつのポージングに対して、このときクラブヘッドはどこにあって、手首の角度はどうで、頭の位置は、目の位置は、腰は、足の重心は……と、からだの各部の動きを丁寧に意識することになる。(同頁)


 この練習法はすごい。上達したいものを超遅モードにすることで、細部にまで目が行き、点検することができるようになるから。
 ぼくたちの意識は、通常一つしか持つことはできない(並列は可。『フェイスブック』のマーク技法を参照。*1ただし対人には不向き。嫌われます)。が、超遅スイングをすることで、意識を各部へ「長時間」向けることができる。通常の練習では「一瞬」しか向けられないのだから、発見の多い練習法といえる。


 意識の増やし方は他にもある。「項目を挙げる」こと。つまりリストアップすることで、意識の量を増やしちゃおう作戦だ。 
 さっそく『SUPER8/スーパーエイト』でやってみると、


・美少女アリスの名演技ー「あなたの身が心配よ(涙)」ーヤラれてしまうボンクラたち(同士!)
・キャラが立ってる(火薬職人のボケっぷり、監督のオタクぶり、俳優のマジメぶり)
・キャラに一貫性がある(同上)
・ジョーの父が怒っている理由(妻が死んだ理由)が微妙じゃないか?
・悪役のラストがあっさりしすぎじゃないか?
・宇宙人のは巣は『第九地区』のアレ?
・宇宙人の登場は遅すぎないか?
・主人公ジョーの喪失感が薄すぎないか?(濃いほうが好みです)
・主人公の決め台詞「でも生きられるよ」は上手い。効果的。


こんな感じに。ほんとはもっとあるけど(強がり!)、リストアップする作業はどれだけ映画を「意識」的に観ていたかの目印になる。
 もちろん、こうしたリストアップは映画だけではなく、すべての対象に応用可能。たとえば、「嫌いなもの」をリストアップするのも、いままで見えていなかったもの(傾向・種類)が見えて面白いかも。