暗い海底から浮かび上がる:『マイナス思考法講座』
プラス思考は一般的に良いことだと思われていますよね。マイナス思考よりはずっとマシという感じがします。しかし悲しいかな、ありのままのプラス思考は「心地よい気分」にしてはくれても、本質的には豊かにはしてくれません。
なぜなら、考えが甘いから。
- 作者: ココロ社
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2010/06/25
- メディア: 単行本
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「オレはみんなとは違うから、用を足しても手洗いする必要なんかないよね。だってオレの手は汚くないもん」
・・・いや、マヂで無理です。手はしっかり洗ってください。
こんな甘い考えをもたらすプラス思考は百害あって一利なしです。や、一利くらいはあるのかな。気持ちはいいし。でも、そうして自分に甘やかされた自分は、現実的な対処・解決策に乏しく、夢を見がちなため、豊かになりづらい。
本書という他者は、こんな甘えん坊の鼻をポキポキと折りにきます。
イヤ〜な人ですね。
実際、どれだけイヤな人なのか。
第1項 あなたはくだらない存在です
第2項 あなたは嫌われています
第3項 誰もあなたの話を聞いていません
第4項 あなたの話は面白くありません
第5項 あなたは恨まれ、攻撃されます
第6項 あなたは空気が読めません
第7項 人はわかりあうことができません
第8項 あなたは成長できません
第9項 弱音を吐くことは許されていません
第10項 人はみな悪人です
第11項 恋愛はすべて「脈なし」です
第12項 あなたは何をやっても失敗します
第13項 本当のあなたを知る人はいません
第14項 あなたの夢は叶いません
他者は、以上のような全力で否定したい言葉を投げかけてきます。
読者は、この他者からマイナス思考のワークを課せられ(上の14項)、以上のことを受け入れるように迫られます。
な、なんて恐ろしいヤツなんだ!
とはいえ、「 オレはもうマイナス思考をマスターしてるよ?」という自負心のある人もいるかもしれません。でも、必ず鼻は折られます。
だって、自分のことを「くだらない存在」で、「みんなに嫌われてい」るなんて超マイナス思考をしている人がいるはずないですから。
かくいう自分がそうでした。特定の人には嫌われていることは知っていたんですよ。でも、まさか「すべての人に嫌われているかもしれない」なんていう恐ろしい想像はしたことはありませんでした。
あぁ、なんてプラス思考人間だったんだ…orz
ただですね、これはマイナス思考であって、ネガティブ思考ではないんですね。
マイナスというのは「慎重を期す」というニュアンスです。「どうせオレなんて・・・」と自己卑下するような態度を作り出す思考法ではありません。
マイナス思考法のキモは、最悪の事態を想定して、そこを思考の始発点とする考え方のことです。最悪の状態から考えるクセをつけることで、現実に対する対処策が高まり、より幸せになれるという寸法です。そのためには一度、海の底まで沈む必要がある。
海底まで沈んだとき、ぼくたちは現実をマイナスの角度から見る技術を手に入れています。
どうじに、脳内には新たな他者が住みついてます。 マイナス思考という他者です。今後は、この新たな住人をパートナーとして共生することになります。
深い海底からふたたび海面に浮かび上がったとき、ぼくたちは真の意味でのプラス思考を手に入れています。