正直こそ最強の戦略:『ネット評判社会』
いまネットでは評判社会が到来しています。
評判社会というのは、他者からの評価が見える化されている社会のことです。
Amazonのマーケットプレイス(中古本市場)なんかが好例ですね。
- 作者: 山岸俊男,吉開範章
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2009/10/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Amazonのマーケットプレイスでは、売り手のサービス(商品含む)を買った人が1〜5段階で評価をします。その評価(満足度)は、0〜100%で示されます。評価表には取引した回数も書かれているので、それを参考にして注文します。
覗いてみるとわかりますが、満足度95%を誇る売り手がゴロゴロしてます。おかげさまで、わりと安心して注文することができています。
で、毎月5回ほど利用するヘビーユーザー(笑)の立場からいうと、売り手を評価するポイントは、1. コメント欄に書かれているものと届いた商品との整合性(どれだけ一致してる?)、2. 発送スピード(どれだけ速く発送してくれた?)、3. 包装の品質(雨除けのためビニールに入っているか?)になります。
なかでも、1.の整合性が大切ですね。コメント欄に書かれている商品の状態と、手元に届いた商品の状態がどのていど一致しているか。 これにズレがあると、しばらく苛立ちがおさまりません(ワナワナ)。あらかじめ、コメント欄に「この本は汚れありです」だとか「線が引かれてます」と正直な申告があれば、多少汚くてもぜんぜん腹は立たないんだけどなぁ。
よい売り手というのは、コメント欄と商品の状態が一致している人、つまり正直な人になります。正直な人と取引できたら、次も安心できそうだから利用しようと思いますしね。
当然ですが、正直じゃない売り手は評価されません。だから彼らはウソをついて短期的に儲けるか、あるいは、ウソをつかない正直者になるか、どちらかの戦略を採ることになります。
Amazonのような再チャレンジが可能な市場では、前者のウソつき戦略も可能です。新たにアカウントをつくれば何度でも別人として参加することができます。それまでの評価をリセットできるから、まっさらな新品状態になれます。桃鉄の徳政令(借金チャラ)が出されたみたいなもんですね。
が、客もバカではありません。
まっさらな状態ということは、他者からの評価がまったくないことを示しています。つまり信用できるかどうか、未知数なわけですよね。正直者かウソつきか、判断する材料が一切ない。ならばすでに信用できると評価されている人から買おうというのが人情というものです。
以上のような再スタート可能な市場では、だれもが固定のIDで評価を高めようとします。評価を高めることが、買い手からの信頼を得ることであり、取引回数を増やすことになるからです。
評価をリセットすることは、だからあまり得策ではありません。ゼロから評価を貯めていかなければいけないし、なにより買い手から信頼されないから。
つまり、再スタート可能市場では、ウソというものが淘汰される方向へ進みます。ウソをつくことで短期的利益を得ることはできても、取引回数を増やすという長期的利益を得ることができないので。
ウソつき戦略は損なんですね。Amazonのマーケットプレイスで高評価を得ている売り手がゴロゴロしているのは、正直であることがトクだからではないかと思います。
というわけで、結論。
ネット社会での最強の戦略は正直であること。
これがネットという評価社会でトクするための論理的帰結です。