デフレと円高の何がマズいのか?→『デフレと円高は何が「悪」か』

いまの日本はデフレで円高だそうです。
ところで、そのデフレと円高のなにがマズいの?
ここんところを丁寧に説明してくれてるのが『デフレと円高は何が「悪」か』です。

デフレと円高の何が「悪」か (光文社新書)

デフレと円高の何が「悪」か (光文社新書)


円高の何が「悪」なの?


まず円高
円高はデフレの副作用で起こり*1、外国のお金にたいして円が相対的に高い状態のこと。
いまは1ドル89円!
すごいことになってるね。
円高ってことは、日本のモノを買う外国にとって都合がよくない。
いままでどおりの材料で作っていても、円高になっただけでプリウスがすごい高価な商品
になっちゃうんだから。
だったら取引相手の外国の人々はモノのクオリティには目をつぶって、安いほうを買おう
とするだろうね。
日本経済は輸出によって成り立っているから*2、これは困ったことになる。
それに労働力も相対的に上がってしまう(外国人の方が日本の労働者より安く雇えるから)。
日本の労働者たちを雇用するのが高くつけば、資本は海外へながれる。
海外の工場でモノを作ってそれを日本に輸入するとか。
で、日本のブルーカラーは窮地に立たされてしまうし、経営者だって(不況が続けばせっ
かくモノを作っても売れないんだから)困るし、日本も外国相手に儲けらんなくて困っち
ゃうし、とうぜん国民がたいへんになる、と。


デフレって何が「悪」なの?


つぎにデフレ。
デフレってのは、モノの価格が継続的に下がっていく状態のこと。
ようするに、どんどん物価が下がっていくことだ。
うん?
モノがどんどん安くなっていく?
けっこうなことじゃないか!って?
まえまえから欲しかったMacも安くなったら買おうかな、だって?
まぁ、たしかにそれはうれしい(笑)。
でもそれはミクロな視点、消費者の立場に立てば、の話であってほとんどのひとにとって
デフレは悪でしかない。
っていうのも、デフレってのはモノが多くてお金が不足している状態(モノ>お金)であ
るわけだから、みんなお金がなくてモノが買えない。
だからモノやサービスが売れなくて企業は倒産の危機にさらされるし、そうであれば労働
者は失業のリスクがやっぱり高まるし、ことの必然として分配される給料やボーナスは減
っていく。
図式化すると、


消費の減少→生産の減少→雇用の減少(=失業者の増加)→所得の減少→消費減少


ってなかんじで、日本経済はどんどん不調になり、失業率はどんどん高まって、陰気な顔
をした人々がどんどん増えていく…。
って、このどこがありがたいっての!
こうしたデフレ下では、モノが安くなってこなきゃ生活していけない。
だからみんな「デフレ期待」(モノが安くなってくるまで待ってよ)をするようになる。
お金を使わず貯め込むようになるわけだ。
すると、モノが売れず、企業は儲からず、給料は減っていき…というウツな展開がどん
どん進行していく(「デフレスパイラル」)。
うぎゃー。
しかし、このデフレを得だと感じる変わった人たちもいる。
それは失業や減給とは無縁のひと。
代表的なのは公務員とか一流企業にお勤めの人だよね(と著者は指摘するけど、もう一流
企業だからってのは通用しないだろうね)。
この間読んだ新聞でも公務員はなりたい職業第1位だった。
不景気になると、「安定」「安心」が求められる。
とにかく多くの人にとって、デフレは「悪」でしかない。


ところで対策は?


じゃ、どーすりゃいいの?
まず、政府と日銀が協力してお金を大量に刷り、とにかくお金の供給量を増やすこと。
そして、年2、3%のインフレを起こしていく(モノ<お金だね)。
お金が世の中に出回るようになれば、みんな少しずつモノを買うようになる。
すると、企業側も生産量をせっせと増やすために正社員を採りはじめるようになるし、社
員たちの給料も上がりだすから、モノがまた売れるようになる。
これがモノ<お金という状態。
つまりお金にたいしてモノが希少になるわけだから、モノの価値が上がり「インフレ期待」
が起きる。
「またモノが高くなるようだから、その前に車を買っておこうか」
という感じに(翻訳者の山形浩生さんは数年後に消費税を7%にすると政府が宣言して「イ
ンフレ期待」を起こせばいい、ともいってる*3。まぁ、たしかに消費税が上がるとなれば
みんなモノを買うようになるけど、すぐには頷きがたいはなしだ)。
でなきゃ、先行き不透明なこのご時世に身銭切りませんって。

*1:としか本書には書かれていない。クルーグマンやマンキューのテキストで、もうちょっと勉強してきます。

*2:「2002年から6年間続いた景気回復局面において、経済成長の実に60%を輸出に依存していました。」p192

世界経済のカラクリ (学研新書)

世界経済のカラクリ (学研新書)

*3:

新教養主義宣言 (河出文庫)

新教養主義宣言 (河出文庫)