科学者としてのハリーポッター
ハリポタ世界における魔法は科学そのものです。
科学とは「誰がやっても同じ結果が得られるもの」です。ただしい手順さえ踏めば、誰でも魔法を使うことができますす。ポリジュース薬をつくるには、正しいモノを、正しい量だけ入れ、正しい手順を踏めば、誰でも再現可能です。ホグワーツで養成されてるのは、だから科学者たちです。
ただ、魔法使いである科学者たちもある失敗をしていました。
それは最強最悪の魔法使い・ヴォルデモートの呼び方です。多くの魔法使いはヴォルデモートのことを「例のあの人」と呼びます。そうしたぼかした呼び方をすることで、あの人のことを考えるのを避けているんですね。しかし、「例のあの人」というあいまいな言葉は、対象への理解を妨げます。理解できないものは、それゆえ恐ろしいものになります。
戦いを挑むハリーポッターは「例のあの人」のことを「ヴォルデモート」や「トム・リドル」など、正しい名で呼びます。多くの魔法使いが「例のあの人」を恐れるなか、ハリーが恐れないのは、そのちがいです。
そしてヴォルデモートの魂が入っている分霊箱を探し出して破壊するという「実験」(壊す→ヴォルデモート「ぐわぁぁ」)をしていくわけです。
ある現象が観察されたとしよう。最初にそれを観察した人間が、それをみんなに報告する。そして、ほかの人たちにもその現象を観察してもらうのである。その結果、同じ現象をみんなが確かめられたとき、はじめてその現象が科学的に「確からしいもの」だと見なされる。(『科学的とはどういう意味か』)
分霊箱壊しは、まさにこれですよね。ハリーだけでなく、ロンやネビルまでもが壊し、「確からしさ」を確認していきます。
これはヴォルデモートという最強の魔法使いを圧倒的な高みから引きずり下ろす行為とおなじです。分霊箱を壊すことによって、ヴォルデモートを倒せるという予測がより確からしくなっていく。ヴォルデモートを絶対に倒すことのできない魔法使いと信じるいる限り、倒すことは敵いません。逆に、付け込まれ支配されてしまいます。
ハリーはそんな神=ヴォルデモートに科学的に立ち向かった魔法使いでした。
科学の発展とは、そういった「神」の支配からの「卒業」だったのだ。したがって、科学によって得られるものとは、人間の自由である。行動の自由、思考の自由、発想の自由、それらを支えるものが科学といっても良い。(同書)
ハリーの功績は、魔法界に自由を取り戻したことではないかと思います。ハリーの科学的行動が神を倒し、多くの人々に行動や発想や思考する自由をもたらしました。つまりハリポタのラストは、科学の発展だったわけですね。
もちろんハリポタはフィクションです。現実世界では魔法は非科学です。が、ハリーの科学的なモノの考え方や行動の仕方というのは、現実世界でも応用可能です。
3.11以後、問題になった原発の放射能漏れ。放射能についての知識がなければ、どの程度、人体に悪影響があるものなのかわかりません。ただ恐怖ばかりが募ります。それではヴォルデモートの支配と一緒です。しかし、放射能が人間に与える影響などの知識を押さえておけば、恐怖は大きく減りますし、対策も打てるようになります。
ハリポタはそのような科学的に振る舞うことの良さを教えてくれる作品でもあったのだと思います。
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