自動思考にご用心:『はじめての認知療法』


 まず、こちらを。



 ありませんか、こんなこと?(笑)


 これはぼくの体験談ですが、かんたんに説明しますと、車内に入ってきた女性が自分のとなりに座らなかったことを「認知」して、自分が嫌われているように感じて悲しくなり、クサっている4コマ漫画です。
 これに似たようなケースはたくさんありますよね。送ったメールの返信がなかったり、挨拶したのに無視されたり…。


 このような一連のプロセスを認知療法では「自動思考」と呼ぶそうです。
 無意識的におこなっている解釈のクセみたいなものです。 


 この「自動思考」は、「スキーマ」という性格のようなものに支えられています。
 スキーマというのは、性格のようなものです。電車の例でぼくが傷ついてしまうのは、「じぶんは愛されていない」というスキーマ(性格)の持ち主だからです。そのスキーマを支えるような事例(根拠)を集めて、「やっぱりオレは愛されていないんだ」と思って傷つく。


 ただ、こうして言葉にしてみるとよくわかりますが、「愛されていない」というのは当然ですよね。はじめて会った人に愛されていたら驚きです(笑) 
 そもそも、


 1.オレは嫌われている(主張)
 2.なぜなら、あの女性はオレの隣に座らなかったからだ(根拠)


という論理にはムチャがあります。
 ぼくの隣に座らなかった女性は、男たちのあいだに挟まれたくなかっただけかもしれないし(反論1)、目に付いた席に座っただけかもしれません(反論2)。


 つまり、「自分の隣に座らなかった→オレは嫌われている」という「自動思考」のワナにはまっていたんです。
 自動思考は「主張と根拠の1セット」で働きます。思考が固定されてるんですね。だったら、揺さぶりをかけてあげればいい。


 そこで、幸せになれる方法を紹介します。
 以下の手順をノートに書くだけです*1
 

Step1 自動思考を書く:オレは嫌われている


Step2 根拠を書く:離れたところに座ったのがその証拠だ!


Step3 反論を書く:3-1 ただの偶然じゃない(意図はないんじゃない)?
          3-2 あるいは、男と男のあいだに挟まれたくなかったとか?
          3-3 ていうか、いきなり「嫌っている」なんてありえないんじゃない?
       

Step4 結論を出す:もう少しデータを集めてから判断を下そう。


 このように、4つのステップを踏んで論理的に考えます。固定化されていた思考に揺さぶりがかかるので、かなり気がラクになります。
 いきなりStep4まで行うのが難しかったら、まずはStep3まででも大丈夫です。十分に効果を得られます。
 

 人は自動思考に陥りやすいものです。ついつい「離れたところに座った→嫌われている」と反射的に考えてしまいがちです。
 もちろん、その可能性も完全には否定は出来ません。人を地獄の底にたたき落とす「生理的にムリだから!」的なリアクションの結果なのかもしれません(そんな世界はお断りします!)。


 でも、それが真実とも限りませんよね。そうではないかもしれない。いつもの思考のクセ(パターン)が原因かもしれない。
 そこで、ほかの可能性を検討するために、反論を書くようにします。不思議なことに、たったそれだけで苦痛が軽減されます。べつの可能性を考えることは、痛みの原因を分散(相対化)させる方法だからです。


 自動思考のワナに陥っているすべての方に。
 

*1:はじめての認知療法 (講談社現代新書) P150の「思考バランスシート」を改良(単純化)したものです。「はじめて」行うわけですから、これでもレベルが高いくらいです。