とにかく答えを出す:『武器としての決断思考』


 なぜぼくたちは決断することが苦手なのか?
「そりゃ、悩んでいるからだよ!」というのもひとつの答えですが、その本質はメリットとデメリットのあいだで揺れているからじゃないかと。


武器としての決断思考 (星海社新書)

武器としての決断思考 (星海社新書)


 たとえば、「犬を飼うか、飼わないか」という悩み。
 犬を飼えば孤独じゃなくなるし、頑張って働くモチベーションが得られるかもしれない。でも一度飼ってしまうと、なかなか手放すことができないし、家を空けにくくなるかも。だからぼくたちは悩む。


 本書が提案するのは、ディベート方式思考法。つまり決断するための思考法のことです。
 ディベートというと「朝まで生テレビ!」みたいな討論番組を思い出しますが、1つのテーマについて賛成側と反対側に分かれて意見を戦わせて「結論を出す」ことがディベート方式の特徴です。上の例で言えば、「犬を飼う」または「飼わない」ですね。


 次に考えるべきは「問題の2者択一化」です。「Who am I?」なんて哲学的なテーマを設定しちゃうのはNG。賛成側や反対側に分かれられないし、いろんな方向に考えられてしまうので、いつまでも結論が出せません。多少強引にでも問題を「○○すべきか、否か」という2択に落とし込みます。


 では、さっそくやってみましょう。
 ネット社会では1つのキャラ(固定ID)で活動するほうが有利だと僕は考えています。が、炎上したり個人情報を特定されたりするのが怖くてなかなか実行に移しづらいです。というわけで「1キャラで活動すべきか、否か」、これをテーマにして考えてみます。
 ちなみに、一人全役です(笑)
 そして賛成側にまわるときは、「メリットの3条件」に沿ってメリットを挙げていきます。
 3条件は以下になります。


<メリット3条件(賛成側)>


1、内因性:どんな問題ある?
2、重要性:その問題はどれくらい深刻なの? 
3、解決性:その行動によって、問題は解決する


 ちょっと分かりづらいですね。
 あれこれ考えるより、とにかくやってみます。


1、1キャラで活動しないと、他者からの評価が分散してしまい、かつ、リアルの私とも合致しないため損。
2、緊急性は低いけど、効率性が悪いという意味でそこそこ重要。
3、ハンドルネームやプロフィール写真を固定すればOK。


 以上が3つの条件を満たした、賛成側のロジックです。
 では、反対側もやってみましょう。
 こちらも「デメリットの3条件」があります。


<デメリットの3条件(反対側)>


1、発生過程:上の行動を取ったとき、新たな問題が発生するんじゃないの?
2、深刻性:その問題はどれくらい深刻なの?
3、固有性:現状はそんな問題は起きてないよ。
 

 これもとにかくやってみます。


1、名前や写真を固定にすると、炎上したときに困る。ずっと晒され続け、リアルまで特定される可能性がある。ネット上で一度マイナス評価を受けると挽回しづらい。結果的に、ネットでの活動がしづらくなる。
2、ネットのみならずリアルにも波及する恐れがあり、すごく大きいから怖い。
3、いまのところ安心だけどね。


 以上が反対側の主張です。
 ぼくたちは、以上のメリットとデメリットのあいだで迷っているわけですね。


 さて、ここからが本番です。
 ディベート方式では「決断」することが目的です。でも、これだけでは決断できません。議論をもっと深めていていく必要があります。
 どうやるのか? メリットとデメリットの両方にツッコミを入れるんです。


<賛成側へのツッコミ>


1、そもそも1キャラで活動する必要あるの? 
2、そんなにたいした問題じゃなくない?
3、たいした問題だとしても、それじゃ解決しないんじゃない?


 まぁ、こんなツッコミが行われるわけですよね。
 議論を深めるため、さらに反論します。


<ツッコミへの反論>


1、だって1キャラで活動しないと、つねにキャラの使い分けを気にしていなきゃいけないし(精神的コスト大)、表現することも分けなきゃいけないし(インプット、アウトプット量増)、他者からの安心感や信頼感も得づらいから。
2、いや、ネット社会では他者からの評価こそ「力」だよ。
3、いいや、ひとつのキャラで活動すればいいわけだから、1の問題はすべてクリアできるはずだよん。


 ふ〜、アタマが結構疲れます。ここは、だからこそ決断思考力が身につくんだぜ、というプラス思考で乗り越えます(笑)
 では、最後のステップ。


<反対側へのツッコミ>


1、新たな問題なんて生じないんじゃない?
2、問題が生じたとしても、たいした問題じゃないんじゃない?
3、重要な問題だとしても、すでに生じてるんじゃない?


 これで本当にラストです。


<ツッコミへの反論>


1、おそらくね。他者を嘲笑・侮蔑・攻撃するような発言をしない限り、炎上することはないはず。
2、大アリ。Googleの検索能力やSNS2chの収集・伝達能力を舐めてはいけない。とある学生のカンニング自慢は、あっという間に広まった。今後、彼は新しいキャラでネット活動しなおさなきゃいけない。それはつまり評価をためるゲームの「振り出しに戻る」ことと一緒。
3、ぼくの知る限りでは、まだ問題は起きてないよ。


 お疲れ様でした。以上がディベート方式の考え方です。
 これからサクッと「結論」を下します。
 

 結論。危ない発言をしない限り、1キャラのほうがトクだし効率的だ。今後は1キャラ活動をしよう。
 以上が「思考訓練」としての結論ですが、正直なところ、この決断は直感で行ってます。メリットとデメリットに点数を付けて、合計点が高い方を採用する方法もありますが、おそらくそんな客観的なデータでは納得できないと思います。最後はやはり「これだッ!」という内なる直感を信じるほかない。
 それは主観じゃないの? だとしたら、これまで考えてきたことがムダじゃないの?
 いやいや、ここまでメリットとデメリットを挙げ客観的に考えてきたからこそ、自信をもって主観的な決断できるんです。メリットとデメリットがある以上、絶対的な自信を持って決断することはできない。だけど、ディベート方式で考える前よりは自信をもて決断できるんだと思います。

ホワイトボード、かなり使えます!

 今年のマイベスト映画「ソーシャル・ネットワーク」で印象的だったのは、呪いの物語とホワイトボードでした。
「ハーバードみたいなエリート大学に行く人間は、思いついたアイデアなりフローチャートなりをホワイトボードに書き留めておくんだな」と教養のないぼくは激しく憧れ、「いつかオレの部屋にも導入しよう! そしてメモったらポイッとペンを投げ捨てるのだ!」と決意しました。
 あれから半年。
 ようやく僕の部屋にもホワイトボードがやってきました。
 以前から調べてたりはしていたのですが、Amazonでは相場が3000円くらいだったので、ちょっと二の足を踏んでいたんですよね。


ナカバヤシ 軽量アルミ ホワイトボード 900x600mm WBA-9060

ナカバヤシ 軽量アルミ ホワイトボード 900x600mm WBA-9060


 ただ先日立ち寄ったホームセンターでは1480円で売られてまして、「もうこれは買うしかないだろ」というわけでやっと購入に至ったわけです。
 しかし、数千円の買い物に半年もかける男ってどうなんでしょうか? 女子にはちょっと怖くて訊けません。
 さて、ホワイトボードを導入してみての感想なのですが、いいです。すごくいい。
 まだ数日しか経っていないし、2、3回しか書き込みしていないので、客観的な評価なんかまったくできないのですが、広々とした空間に思いっきりかけるのはやっぱりいいです。すごく気持ちいい。友人と打ち合わせした内容をここに書いていくと、アタマの整理にもなりそうです。
 いろいろと便利そうだ。



 上の写真に書き込まれているのは、ミクロ経済学*1のメモです。読書メモを書いてみたんですが、なんかいいカンジなんですよね。これを見てるだけで無意識学習ができちゃうんじゃないの、というカンジがしないでもないです。
 やっぱり画面がデカいから、よく学べちゃうんだろうなぁ。
 こんな壮大な勘違いをさせてくれるホワイトボード、わりと本気でオススメです(笑)
 

*1:

この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講

この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講

10・3・1を抽出する:『つながる読書術』


 ちまたには読書術の類書が無数にあります。
 それらの本と本書はどう違うのか?
「みんな」という視点が入っているところです。


つながる読書術 (講談社現代新書)

つながる読書術 (講談社現代新書)


 読書術というのは、基本的に「個人」の読む力をパワーアップさせるものですが、本書は「みんな」でシェアするための読書術だそうです。
 だそうです、なんて中途半端な書き方をしているのは、本書の半分は個人のため、半分はみんなのための読書術だと感じたからです。4章の「話してつながる読書術」がそれに当たるのではないでしょうか。
 ただ、本を読み、文章を書き、それらを実践していくのは他者にアプローチするためという点を考慮すれば、本書はみんなのための読書術ということでもよいのかもしれません。
 ささやかではありますが、これがこの本に対する「批評」です。


 さて、このエントリは、本書の1章で紹介されていた「10・3・1」読書法で書いてみようと思います(議論ポイントは割愛)。
 「10・3・1」読書法とは、面白いと思った10ヶ所、人と議論したいと思った3ヶ所、これは違う!と思った1ヶ所を抽出する読み方のことです。
「1」については、すでに書きました(笑)。
 では、残りを書いてきますね。

1、「10・3・1」読書法


 上記です。

2、自分の土俵で本を読むということ


 本を読むという行為について、これが抜けていたら損だと思います。「相手の土俵」で読む時期もありますが、それではいつまでも自分の言葉で本を語り、評価することができるようになりません。「この本で著者は○○だと言ってました。なぜなら・・・」という5W1H型の読み方あるいは書き方も有効であり必要だと思うのですが、それだけでは面白さが出せません。
 だから、自分の土俵で読む。

たとえば「ぺたぺた付箋を貼りつけ、思いついたことを欄外に書き込み、一冊につき一〇ヶ所ほどページの隅を小さな三角に折り曲げ、同一書物内の大きな矛盾点にはこれみよがしに×記と参照ページを書き付ける。本の著者にとって大事なところにではなく、私が『?』とか『!』と思ったところだけに線を引く」(p.122)

 こうした「本との格闘」こそ、独自の見解を述べるために必要なことだと思います。

3、原則は迷ったら買う


 ときどき、「いま1800円出すのはキツいし、また今度考えることにしよう」と購入をケチるときがあるのですが、90%以上の確率で買うことになるので、『一般意志2.0』*1(@東浩紀)はしっかり買ってきました(笑)

 

4、素直に読む


 上に書いたように、批評性はたしかに大切なのですが、最初から斜に構えた態度で読んでしまうと、自我や持論を守り強化する牽強付会(けんきょうふかい)的な読み方になってしまいがちです。
 読書の基本は素直に読むこと。内容を検討したり批評したりするのは、次のフェーズで。
 これには激しく同意します。 

5、相手の思考回路に入る

 

 イメージとしては「マルコビッチの穴」のジョン・キューザック*2
 ん? もしかしてわかりにくい?
 では、こちらを。

『偽善形2』(文藝春秋)で佐高信さんについて、単なる批判ではなく愛情と真剣さと(笑)をもった批評として書く(略)にあたり、私は佐高さんの本のすべてを読みました。
(略)
 ほとんど彼の頭になりきって読んでいくうちに、本能的であれ自覚的であれ、彼の隠したい部分や逃げたい部分、触れられたくない部分までわかってきます。
「こういうときには、こう言い返すだろう」「ここで詰むな」という仮説をもとに実際の佐高さんの言動を見ていると、ぴたりと当たる。「意外にもこんなことを言った」ということがあれば、私の頭を修正する。これを繰り返していたら、一時期、私の頭は佐高化しました。(p.69)

 ここまで極端ではなくとも(笑)、「思考回路に入る」ということがよくわかる事例だと思います。
 相手の隠したがってるところや、詰むところまで読めるのはすごいですね。

6、専門用語・ジャーゴン、方言を書き出す


 たとえば2chのジャーゴンにはオワコンというものがありますが、これをわざわざ「すでに終わっているコンテンツ」と紙に書きだすというわけですね。
 2ch用語は頭文字を取って略しているだけのケースが多いので、一度意味を理解してしまえば書き出す必要はないかもしれませんが、たとえば経済学の本を読むときなんかは、限界効用だとか、名目GDPだとか、いったい何のことかわからない難しい専門用語がたくさん出てきますので、こんなときには有効だと思います。
 一度読んだだけではなかなか理解できないし覚えられない。そのまま読み進めてしまうと、頭にうまく入らなく、面白さも損なわれてしまうので、「知らない言葉は書き出して、アタマは他に使おうね」という提案だと受け取りました。
 これも採用決定!

7、大小の仮説を考えながら読む


 正直、これは使えます。
 本ならば目次を読み込み、「こういうことではないか?」と展開を予測しながら本文を読むという順序ですが、映画などにも使えます。
 先日、M・ナイト・シャマランがプロデュースしている『デビル』*3という映画を見ました。映画の冒頭ではデビルに家族を殺害された刑事が登場します。友人との朝食シーンで、その設定が明らかにされているため、この映画のテーマは「赦し」ではないかと仮説を立てました(結果はビンゴでした)。これが「大」の仮説になります。
「小」の仮説は、「なぜ高層ビルを逆に撮しているのはなぜだろう?」というような、演出の意味を問うようなものから、「フードを被ってた男、怪しくない?」という脚本の意図を問うようなものまであると思います。
 ポイントは、当たり外れに関係なく仮説を立てること。これだけで理解力や記憶力がまったくちがってきます。

8、最新作、代表作、処女作を読む


 教養とはパースペクティブ(展望)のついた状態だそうです。この3つの本を読むことは、それらより上位、神様的視点から本を語ることができるようになる。つまり情報を教養化することができる読書法なんじゃないかと思います。
 村上春樹なら、処女作:『風の歌を聴け』→代表作:『ノルウェイの森』→最新作:『1Q84』かな。
 この3つの視点があるとき、歴史込み(「原点・基本・現在」)で春樹について語れるのかもしれません。

9、考えるべきポイントは2つ


 a. 本当のところはどうなのか?
 b. 自分はどう動くのか?


 原発、不景気、失業から恋愛に至るまで、世の中にはさまざまな問題に溢れてます。
 個人的に気になっている問題として、「他者の視線」があります。電車やエレベーターで、ぼくたちは必死に他者との視線を外そうとしますが、あの視線です。目が合うとすごく気まずし疲れちゃうんですよね。視線疲れというか。
 その問題の本質を知るために『まなざしの人間関係』*4という本を読んだのですが、ここにヒントが書いてありました。

 少しだけ補足すると、他者に見られることで彼らの世界に取り込まれてしまった私は、自由に振る舞うことができなくなるんですね。私は観客のために演技する舞台俳優のようなものになり、観客(他者)のためだけに演じ続けなければいけなくなる。これが疲労の原因だとわかりました。
 自分ひとりではとても考え至らないことでも、本の力を借りれば思わぬところまで行けたりします。
 そのとき、「自分はどう動くのか?」。
 この主体性の部分まで考えるというのは、理屈を行動力に変えるためのコツなことだと思います。
 

10、事実、解釈(意見)、文体(話術)の面白さを書く


 書くべきポイントは、何通りもあります。おかげで悩んでしまい、なかなか書けないなんて事態が起こります。そこで以上の3つにポイントを絞って読み書きすると決めてしまうと、かえって書きやすいかもしれません。
 このエントリだけでなく、基本的に僕は解釈(意見)についてばかり書いているので、これからは事実や文体に触れていこうと思います。


 以上がぼく的に面白い10ヶ所でした。
 う〜ん、長くなっちゃった。

*1:

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル

*2:

マルコヴィッチの穴 [DVD]

マルコヴィッチの穴 [DVD]

*3:

*4:

まなざしの人間関係―視線の作法 (講談社現代新書 (641))

まなざしの人間関係―視線の作法 (講談社現代新書 (641))

知識を思考の棚にしまおう:『自分のアタマで考えよう』その4


 ブログ更新をさぼっているあいだ、アクセス数が飛躍的に伸びた日がありました。
 原因を調べてみると、ちきりんさんにツイッターで紹介してもらえたからでした。



 どうもありがとうございました!


 では、続きです。
 今回は「知識を思考の棚にしまおう」という話。
 話がすこし飛ぶのですが、先週の日曜に「マネーボール」という映画を見てきました。


マネーボール


 野球の才能がある少年がプロ野球選手になるか大学に行くかという人生の岐路に立ち、前者を選んで失敗してしまったというのがこの物語の現在になります。


 さて、以上の情報を思考の棚にしまったのが表1になります。


【表1】

  

「思考の棚」はこのようにマトリクスで書きます。
 たとえば、縦軸には「対象」を、横軸には「項目」を書きます。
 対象は「マネーボール」(MO)で、項目は「呪いと解除」にしました。
 項目に呪いと解除と書いたのは、「マネーボール」の主題だと思ったからです。

 
 これでとりあえず棚を作ることはできました。
 ここでのポイントは、あえて対象の下に「?」と書いておくこと。「?」という空欄部分を作っておくと、脳が自動で探し続けてくれるので、ある日とつぜん空欄が埋まったりします。風呂に浸かっているとき、突然「『ソーシャル・ネットワーク』が適切なんじゃないか?」と気づきました。
 なぜ「ソーシャル・ネットワーク」なのか。あの映画も呪いと解除を巡る話だからです。

 
ソーシャル・ネットワーク」は大好きだった彼女に手痛く振られてフェイスブック街道まっしぐらな話。
マネーゲーム」はスカウトマンの甘い誘いに乗って人生を狂わされてしまった少年の話。
 どちらも呪いのきっかけは「他者の言葉」です。


 呪いをかけられたものは、自力で解除しようともがきます。
 マーク・ザッカーバーグが友を裏切ってまでフェイスブックを守ろうとしたのは、それが呪いを解除する唯一の手段として見ていたからではないかと思います。でも、フェイスブックはいつまで経っても呪いを解除してくれません。
マネーボール」の主人公ビリーも自らの才能に磨きをかけますが、いつまで経っても結果が出せず、苦しい日々が続きます。


 表2を見て下さい。


【表2】


 彼らに共通しているのは、他者の言葉によって呪いをかけられたことです。
 しかし、違いもあります。呪いの解除法です。
 マークは新米弁護士の「あなたはクソったれなんかじゃないわ」という言葉で、ビリーはある選手のホームランを見たことで呪いが解除されます。


 言葉と行為という違いがわかること。
 これも思考の棚のメリットです。
 さらにべつの映画で探してみました。すると「プリンセスと魔法のキス」というディズニー映画がそれにあたることに気づきました。
 これは魔法使い(?)の「魔法」によってカエルになってしまった娘が、王子と「キス」することで解除される話でした。
 ここで「呪いと解除」という物語の棚に、新しいパターンが追加されました。
 おお、これは便利(笑)


【表3】

 
 ほかにも「地域性」(アメリカ・日本・ヨーロッパ)や「時間」(過去・現在)や「他メディア」(映画・本・ネット・リアル)を入れていったら、もっと幅広い思考の棚を作れそうです。
 発見や気づきもたくさんありそうだなぁ。
 よし、もっと沢山つくろう。


自分のアタマで考えよう

自分のアタマで考えよう

プリンセスと魔法のキス [DVD]

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2×2マトリクスで判断基準を作る:『自分のアタマで考えよう』その3


 ひとつまえのエントリで、「意志決定モデル」の作り方を書きました。
 今日はより具体的な判断の仕方、「2×2マトリクスで判断基準を作る」です。


自分のアタマで考えよう

自分のアタマで考えよう

どのキャリアのどのプランにしたらいい?


 たとえば携帯電話を新しく契約しようとすると、いろいろな問題が出てきます。


・キャリアはどこにする? docomo? au? SoftBank?
・ケータイはスマートフォンガラケー、どっちにする?
・使用料金の予算はいくらにする? 3000円? 5000円? 10000円?
・パケット放題にするorしない?
・電話をよくかけるorそこそこorかけない?


 このように検討すべき項目がすごく沢山あるんですよね。
 キャリアを選ぶためには、以上のようなことを考えなければいけないため、新しく契約したり、プラン変更したり、機種変したりするのがすごく面倒に感じます。「よく分からんから、いまのままでいい」という理由で変更しない友人もいます。
 そこで各キャリアは、ホームページにクリックしていくだけで最適なプランが分かる仕組みを設けてあります。


docomo お支払いシミュレーション http://www.nttdocomo.co.jp/charge/simulation/index.html?icid=CRP_CHA_rec4_simulation
au料金クリニック http://www.au.kddi.com/clinic/index.html
SoftBank 機種変更料金シミュレーション http://mb.softbank.jp/mb/support/change/simulate/simulator/#!/iphone


 ただし、これは「各キャリアが自ら設けている」というところがポイントです。自社以外のキャリアを薦める会社はありません。自社の製品と料金体系をオススメする仕組になっています。だから加入者は悩むんですよね。どこのキャリアも「我が社がベストです」とはいうけれど、実際どこがベストか分からないから。

 
 そもそも論になってしまいますが、すべてにおいて優れているキャリアというのは存在しません。もし存在するとしたら、一人勝ちしているはずです。でも、現実はそうなっていません。キャリアごとにシェア率はことなるものの、DocomoAusoftbankとバラけています。
 なぜバラけているんでしょう? どこのキャリアにも、一長一短があるからですよね。


docomoなら電波の入りがいいけど、料金がやや高め。
auなら電波はそこそこだけど、WIMAXが使える。
SoftBankなら電波の入りは微妙だけど、iPhoneがある。
 (※AUiPhoneを提供し始めたので、それまで独占していたSoftBankの競争優位性はかなり凹んだような気がします)


 さて、ではどうやってキャリアと契約すればいいんでしょうか?
 それは契約者によって変わってきます。


・機能なんかはショボくていいよ
・料金が安ければいいよ
・電波の入りがよくなきゃ仕事になんないんだよ
・ネットをガンガン使いたいな


 個人にはそれぞれの事情や願望があります。だから万人に向いた提案というのは原理的に不可能です。そこで自分の大切だと思うものをリストアップして、プライオリティ(優先順位)を付ける必要があります。これはなかなか面倒なんですが、売り手と書い手という関係性である以上、これだけは他人による代行はむずかしいです。

2×2マトリクスを書いてみよう


 さて、優先順位を付けた後、上位1位と2位を縦軸と横軸に書きます。

例. 1位:価格 2位:機能


 この右上にくるキャリアやケータイを選べばいいわけです。このマトリクスでいえば、ソフトバンクスマートフォンiPhoneになります。
 でも、「現実はそんなに単純じゃない。大切なものがいっぱいあるじゃないか」という向きもあるかもしれません。たしかにその通り。現実はそんなに単純じゃないと思います。でも、物事を判断するときに、これ以上複雑なことを織り込りこもうとするのは、ちょっと難しいじゃないでしょうか?

世の中は複雑です。大事に思えることはたくさんあります。でも、だからこそ「その中で、もっとも大事なことはなんなのか?」という点を見極める必要があるのです。そして、多くの選択肢の中から大事なものを見極めるためには、あえてシンプルな基準が必要なのです。(p131)


 世の中にあるものは、すべてトレードオフです。何かを選んだら、何かを失うようにできています。こちらの希望を全部兼ね備えているような美味しいものはありません。彼氏彼女、夫や妻にすべての希望を求めるのは不毛ですよね? だから、「これだけは外せない」という大切なものを選択基準にしたほうが、ハッピーになれる確率はずっと高まるはずです。
 2×2マトリクスは、そんな幸せをアシストしてくれます。

意志決定モデルをつくろう:『自分のアタマで考えよう』その2


 ちきりんさんの新刊『自分のアタマで考えよう』を読み終えました。どれも身につけたい技法ばかりの良書だったので、連続してエントリを上げていこうと思います。
 今日は「意思決定モデル」の作り方について。


自分のアタマで考えよう

自分のアタマで考えよう

意思決定モデルを作ろう


 買い物をするとき、ぼくたちはたくさんの商品の中から「これにする!」と選択しますよね。
 そのときの判断基準ってどこにあるんでしょう? 
「この素材のシャツで4980円は高すぎる」「このデザインのカットソーで2980円は安い」みたいな判断を自然に行えるのは、仮説と実験の結果です。いままで何度も繰り返してきたから、価格の高い・安いという判断が行えるんですよね。
 このように、自分のなかには意志決定のための判断基準があると、買う/買わないを仕分けることが可能になります。

 昨日、リアルに買い物してきたので、そのプロセスを書いてみようと思います。
 まず、買い物に行く前に、思考と調査をしました。


 Q1. どんな情報が欲しいのか→A. いま持っているジャケットに合うインナーが3、4枚欲しい(シャツとカットソーとカーディガン)。
 Q2. 入手した情報からどんなことが言えるのか?→A. 新しい組み合わせができる。

 
 「新しい組み合わせ」を作ること。これを買い物のゴールとして設定しました。
 さっそくジャスコのなかに入っている洋服専門店のホームページに行き、洋服をあれこれ探してみました。 
 チェックした項目は、価格と色とデザインの3つです。
 その結果、明るめのカーディガンと暗めのボーダー・カットソーの2つが見つかりました。どちらも今もっているジャケットに合いそうだったことと、新しい組み合わせが作れそうでした。シャツは適当なものが見つからなかったのですが、相場が3000〜5000円と予算以内ということがわかったので、ま、こんなもんでしょ、という感じで現地へ向かってみることにしました。
 

 お店に着いてみると、ちょうどタイムセールが行われていて、シャツとやカーディガンが販売価格の20%offで売られていました。
 ただ、リアルでモノを見てみると、カーディガンの素材感や色味がパソコン見てイメージしていました。少し迷ったのですが、その場でさっと考えて購入することにしました。
 その後、ボーダーのカットソーも予定通り発見→購入し、買い物終了となりました。
 所用時間は30分くらいだったかな? 

必要・不必要の仕分けをして、欲しいものを明確にする


 洋服の買い物に限らず、モノを買うときに大切なのは、事前の洗い出し作業です。何が必要で、何が必要ではないのか。これをハッキリさせないで買い物しに行くと、必要のないものを買ってしまうことがあります。


 ときどき友人のMくんやKくんから「買いもの付き合って!」と頼まれることがあります。彼らはあまり買い物慣れしていないので、上の仕分け作業を行いません。いきなりお店に行って「いいな!」と思ったものを買ってしまいます。
 でもそれはお金がたっぷりある人の買い物の仕方です。お金のあまりない人には1万円とか2万円という予算があるので、そのなかで買い物しなければいけません。
 また、ファッションは色やデザインの組み合わせなので、最大の効果を上げるには持っている洋服を生かす買い物の仕方が合理的です。MくんやKくんと買い物に行くとき、真っ先に行うことは朝マックで必要・不必要なものの仕分け作業です。そうして入手すべきアイテムを明らかにしてから、現地へ向かうようにしています。
 こうした「考え」る作業は、料理を作るときなんかでも一緒ですよね。

「考えること」「思考」とは、インプットである情報をアウトプットである結論に変換するプロセスを指します(図4)。「私は考えた」というのは、「私はあるインプットをもとに、なんらかの結論を出した。ある考えに至った」という意味です。それは「仮の結論」でもいいし、最初の段階では間違ったものかもしれません。それでも「その時点での結論を出した」というのが、「考えた」ということです。(p34)


 実際に行ってみると意外な展開になったりますが、それはそのとき考えればいいことです。「仮の結論」を持っていっていれば、価格のような判断基準として機能してくれるので買い物しやすいです。


 どんなに稚拙でもいいから「私はこう考えた」という結論を出していく。
 これが買い物に限らず、物事を意志決定するときの要諦ではないかと思います。

思考の技術:試読版『自分のアタマで考えよう』その1


 いま一番注目しているブロガーのちきりんさんが、今月の末に新刊を出されるそうです。その名も『自分のアタマで考えよう』。考え方のヒントがたくさん詰まっている本らしいです。そのお試し版が『週刊ダイヤモンド』に付録されていたので、今日はそれをネタに書いてみようと思います。


週刊 ダイヤモンド 2011年 10/22号 [雑誌]

週刊 ダイヤモンド 2011年 10/22号 [雑誌]

「思考」は「知識」にだまされる


 たとえば、「男子は女子のレギンスが嫌い」という統計データがあり、それを知っていた(知識)とします。
 このデータから、「だから女子はレギンスなんか履かないほうがいい」という結論を導くことができます。
 でもこれは、自分の持論に正しさをもたらすためデータを利用しているだけですよね。ここでの知識はただの前提です。「男子はレギンスが嫌い」という知識とそれを裏付けるデータが一致したから自分の結論が補強されているだけであり、アタマを使って何かを考えているわけではありません。  


 女子がレギンスを履いている理由。それには、シュッと見えるから、ラクだから、カワイイから、というような動機が当然あるはずです。もし上のような統計データをもとに「考える」のだとしたら、「なぜ男子はレギンスが嫌いなのか?」「なぜこんな結果になったのか?」というような問いを立てて、それに対する答えを探すんじゃないのかな? 
 少なくとも、これで持論に着地するようなことはなくなります。


 レギンス愛好者のぼくとしては、毛嫌いする理由がまったくわかりません。デニムの短パンとレギンスの組み合わせって最強じゃないですか。
 とはいっても、これはレギンス賛成派の意見だけなので方手落ちです。そこでネットで反対(男性)派の意見を調べてみると「スカートの中のパンツが見える可能性がない」からという猛者がいました。
 いや、まぁ、分からないでもないけど・・・。ねぇ?(笑)


 あと、「ファッションってのは、異性へのアピールでしょ。だからアピールしないファッションするなんてダメじゃん」というロジックが多かったです。
 これも分からなくはないです。 


 ファッションというものは「見られたい私」の演出の結果です。
 大学生の頃からジャケットを着用するようになったのですが、それは「幼く見られてナメられるのはもう沢山だよ!」という童顔コンプレックスを解消するためでした。見た目と年齢との差をファッションという手段で穴埋めしよう作戦だったのです。つまり、対人用の戦略です。

 
 でも、ファッションは他人に見せるだけのものじゃありません。オシャレな格好をすることそのものが目的だったりします。
 なぜそんなことをするのか? もちろん、「わたしってオシャレー♪」というナルシズムを満たすためですよね。この変種には「わたしっ頭いいー♪」とか「わたしって優し−♪」とかあります。


 まとめると、ファッションには対人用と対自分用の2種類の目的があって、男性側が文句を言ってるのは、前者なんですよね。「キミのファッションって、自己愛率高すぎない?」と。
 で、女性側は後者(「わたしの自由でしょ」)をもとに反論してるわけです。
 

 対人戦略的に「レギンスはウケが悪いから履かない」はアリだと思います。見た目が重視される社会ですから、これはこれで賢い選択です。
 でも、それを承知した上で、レギンスを履くのも当然アリだと思います。むしろ、潔くてカッコいいです。
 それに対して文句を言うのはナシだと思います。「なんでオレの好きな格好をしてくれてないんだよ(涙)」とわざわざ苦情を申し立ててるようなものですから、ここはぐっと我慢して男を磨いたほうが得です。さすれば道は開かれん?

 
 というわけで、データから「思考」してみましたが、なんか思っていたよりもむずかしかったです。いままで思考してたつもりだったということがよく分かりました。ぐぐぐっ。 
 大人になると、知識がたくさん溜まってくるので、子供のころのような柔軟な発想ができなくなります。それは過去の事実の集合である知識が思考を束縛しちゃうからでしょうね。
 これに対するちきりんさんの処方箋は、思考するときは知識を一度「舞台の外に出す」といいよ、です。これはほんとその通りだと思いました。知識による思考への干渉を防がないと、どうしても持論に着地してしまうですよね。今回、意識的に知識を舞台の外に追い出してみたのですが、知識の干渉を防げたように思います。


 新刊、早く読みたいなぁ。


自分のアタマで考えよう

自分のアタマで考えよう